完璧なはず、だった。

「相手の出方みたいなのも、だいたいわかっていた。笑い飯とか千鳥も、そんなにいいネタができてる感じじゃなかったんですよ。で、これは狙えるな、みたいになっていて」

 2007年のM-1戦線――。ラストイヤー組のトータルテンボスの大村朋宏は、そう手ごたえを感じていた。大村は同コンビのボケであり、船頭役でもあった。

 M-1は出場回数を重ねれば重ねるほど周囲の期待は高まり、同時に越えなければならないハードルは高さを増す。この年、03年から4年連続決勝進出中だった麒麟は準決勝で敗退。6年連続で決勝に残った笑い飯、2大会ぶり四度目の決勝進出を決めた千鳥も、予選で強烈なインパクトを残しているわけではなかった。

 あとは、出番順だった。

 過去6年のデータを取ると、適度に会場があたたまってくる4〜6番手あたりの組が、もっとも上位3組に食い込む確率が高い。大村の相方で、アフロヘアがトレードマークの藤田憲右が思い出す。

「順番は5、6番をねらっていた。そうしたら抽選で大村が5番を引いたんですよ。よし、来た、と」

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source : 週刊文春 2022年3月3日号