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“老い”の不安、伝わる技術、「船を出す」幸福感

私の読書日記

橋本 愛
エンタメ 芸能 読書

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 最近“老い”や“老後”について思いを巡らせ、悲観的になっていた。もしひとりになってしまったら、私はちゃんと楽しく生きてくれるのだろうか。未来の自分をなかなか信用できずにいた。そんな時に出会ったのが『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』(すばる舎 1200円+税)。92歳の中村恒子さん、54歳の奥田弘美さんという二人の精神科医による対談本。

『不安と折り合いをつけて うまいこと老いる生き方』

 恒子さんは転んで足を骨折した2年前まで現役の医師として活躍されていた、すごくパワーのある方だ。「後悔なく老後を過ごせているのですね」と聞かれて、こうおっしゃっている。

「家でできる趣味も見つけておいたら良かったなと、それだけは小さな後悔かなぁ」

 曰く、旅行や外にでかける趣味は後悔しないほどやったけれど、いざ外出が難しくなると、家でテレビを見たり読書したりくらいしか、やることがない。「もうちょっと暇をつぶせる趣味でもあったら最高やろうなって思うねん」と。これを見て私は、自分の後ろめたい趣味が老後の大事な宝になるのではと目を見開いた。

 私は「スプラトゥーン」というゲームにハマっている。朝までやってしまうこともしばしばあって、時間を無駄にしているのではないか?と少し背徳感があったけれど、これは恒子さんのいう、家でできる立派な趣味じゃないか! インプットする本やテレビと違って、ゲームは手を動かすことによって何かを成し遂げるという、アウトプットの娯楽。脳の活性化にもいいんじゃないか!?と前向きな気持ちになり、これからは「老後のためにゲームをしている!」と思おう(笑)。

 また、恒子さんのこんな言葉が、今までとは違う視点を与えてくれた。

「今は便利になったから、あれこれ考える時間が多過ぎるんと違う?」

「忙しく動いているうちに、不安を感じる暇もなくなるってこともあるからね」

 恒子さんが若い頃は、戦時中や戦争直後で食料もなく、目の前の仕事や家事をこなすだけで必死だった。

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source : 週刊文春 2022年4月28日号

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