神の一手、AI超えの一着――。藤井聡太竜王が指す終盤の絶妙手、誰もが気が付かない一手はしばしばこう表現される。
好手とはうまい手、見事な技のことだが、妙手、絶妙手は意外性の意味合いも含んでいる。つまり芸術であり感性。だから人の心を捉えるのだ。
最近では藤井棋聖対永瀬拓矢王座の第九十三期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負・第二局で、終盤に放たれた藤井棋聖の銀打ちが話題になった。
広々とした脱出経路が確保された永瀬王座の玉は捕まりそうもなく、逆に藤井玉は端に追い詰められて絶体絶命。そこで逃げ道封鎖の銀の絶妙手が出るのである。大技後の収束も完璧で、これぞ名局であった。
ハイレベルの応酬だからこそ、妙手も生まれる。将棋は二人で作り上げる芸術なのだ。
手に汗握る終盤戦は将棋の華。攻めが続くのか? 凌ぐのか? そんな場面での妙手だから盛り上がる。AIの評価値で指し手の良し悪しが可視化されるようになり、今、アベマの将棋放送では視聴数の10万超えも日常茶飯事なのだ。
将棋界で語り継がれる妙手は数多くある。羽生善治九段対加藤一二三九段戦の「羽生の☗5二銀」はテレビのNHK杯戦でもあり非常によく知られている。
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source : 週刊文春 2022年7月7日号