週刊文春 電子版

脳の仕組み、子どもの教育、論理の限界

私の読書日記

橋本 愛

連載

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 私が脳について興味を持ったきっかけは、今年の3月、熊本で舞台「水と火と木、そして再生の物語」を演(や)ったときに犯した最大の失敗にある。

 たった1日限りの全2公演で、熊本地震からの復興をテーマにした作品だった。昼の初演後、私の中からごっそり何かを捧げたような感覚になった。思い込みかも知れないけれど、確かに鎮魂の感触があって、あらゆる御霊たちが天界に上昇していくかのように思えた。

 だが夜の公演では、自分の中から全くエネルギーが出せなくなってしまったのだ。舞台上で起こる全てのことが“本当”に感じられなくなって、最後まで抜け殻のように存在することしかできなかった。

 知人に相談すると、これは脳の仕組みによるものではと教えてくれた。人間の脳は、物事を達成するまでは力を出せるけれど、達成した時、あるいは達成が近づいた時に、それまでの力が出せなくなるようにプログラミングされているのだと。つまり今回は、無意識のうちに初演の成功を目標に設定してしまい、それが達成されたので、以降様々な電源がオフになってしまった、ということらしい。

 であればこの脳の仕組みを利用して、「目標の位置を少し先にずらす」ことで解決できる。今回の場合なら「最後に最高の演技をする」といった具合に。これを今ドラマの現場で実践していると、確かに最後までエネルギーが身体に送り込まれる感覚がある。

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source : 週刊文春 2022年8月4日号

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