国葬のゆくえ｜林真理子

　忙しさのあまり、大好きな買物にもなかなか行けない。

　今日は閉店時間少し前に、やっと行きつけの某ファッションブランドショップに入ることが出来た。

　驚いた。ブラウスやスカートの値段がものすごく上がっているのだ。思えば円安になってから、こういう輸入ブランドの店に来るのは久しぶりかもしれない。私の感覚だと、2割ぐらい高くなっているような感じだ。

「これなら台湾に行っても、何も買えないな」

　秋にいつもの女友だち3人で出かけることになっている。1人はファッション雑誌の編集長を長く務めた“おしゃれ番長”だから、一緒に行く買物の楽しいことといったらない。

「これは日本に入ってこないから買い！」

「ふーむ、似合うか似合わないかは微妙」

　と判定も下してくれる。

　以前はマカオと香港へ、バーゲン時を狙って毎年買物ツアーに出かけたものだ。しかし3年ぶりの海外旅行であるが、円がこれほど弱くなっては何ら得することもないだろう。

「昔を思い出すなぁ……」

　傍にいた若い友人に語りかける。

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source : 週刊文春 2022年9月15日号

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