人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 先日、上野の国立西洋美術館に『ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』なるものを見に行った。

 休日だったこともあってか、チケットカウンター前にはかなりの列が出来ていて、僕はその待ち時間、入場口横に貼り出されたでっかいポスター“ピカソ作『黄色のセーター』”を見て妄想を始めることにした。

 所はスペインのある高級クラブ――。

「こちらはかの有名なピカソ先生。もちろん知ってるわよね」

 まだ20歳そこそこの彼女は席に着くなり先輩ホステスにそう言われ、即座に作り笑顔で返したが、名前すら知らなかった。

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source : 週刊文春 2022年11月03日号