男の名前を借りなければ本を出版できなかった女性作家が出会ったのは、記憶を無くした醜い女の子。やがてこの出会いが2人を変え、周りの女性たちの意識も変え、連帯を生む。そんなの最高のシスターフッドじゃないか!『黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ』を読んでから、私はずっとパワーが漲っている。怪物上等、「私は私、ほかの誰にも渡さない」。
19世紀の大英帝国、ロンドン警視庁の犯罪資料室「黒博物館」を訪れた女性作家は、女王主催の舞踏会で起きた怪事件の遺留品である赤いブーツの閲覧を希望する。彼女の名はメアリー・シェリー、聞き上手な学芸員にかつてこのブーツの持ち主と共にした奇妙な冒険について語りだした。
小説『フランケンシュタイン』の生みの親であるメアリーは、舞踏会で踊りながら要人たちの命を奪う暗殺集団「7人の姉妹」のうちの一人の遺体に事故で死んだ村娘の頭を移植した〈怪物〉の教育を依頼される。そのおぞましい見た目に最初は嫌悪するメアリーだったが、息子の学費を稼ぐためと奮起。〈怪物〉をエルシィと名付け、共に暮らすうちに、だんだんとエルシィに親しみを覚えるようになる。
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source : 週刊文春 2023年11月30日号