【前回までのあらすじ】逮捕から約二カ月後、瀬尾の公判がスタートした。満員の傍聴席を前に緊張する奏。検事によって告訴人・藤島一幸の起訴状が読み上げられ、間違いがないか問われた瀬尾はしばし押し黙った後、罪状を認めた。その後、弁護側の被告人質問が始まり、奏は瀬尾が天童と出会ったきっかけを始め、二人の関係性を明らかにすべく一つずつ質問を重ねていく。
「昨年一月、週刊誌にスキャンダル記事が出たとき、瀬尾さんはどんな心境でしたか?」
「記事が掲載される前に電話をもらいまして。自分で蒔いた種とは言え、かなり落ち込んでたんで心配でした」
「結果的に仕事が全て降板になりました」
「当初は事務所の方でも謹慎して復帰という青写真を描いてたようですが、思ったよりも厳しい展開になってしまった感じです。スキャンダル報道から三ヵ月ほど経つと、LINEやメールの返信がなくなりました。もちろん、ピアノのレッスンどころではありません」
「瀬尾さんはピアノのレッスンを通して、天童さんの奥様とも面識があったんですよね?」
「えぇ。奥さんにも教えてましたから。私がお手本となる演奏動画を添付してメールを送ることもあったので。彼女もつらかったと思いますが、幼い娘さんもいるので、何とかやり直そうと考えていたようです」
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source : 週刊文春 2024年2月1日号