【前回までのあらすじ】天童の父親は、美月のために尽力し、追い詰められて命を落としてしまった弁護士・柴原恭士だった――は、瀬尾の執念の行為の裏側にあった事実を知る。そして、天童の弁護士に対する憧憬を、本当の意味で理解する。芸人として大成する天童を誇らしく思っていた奏と、天童もまた弁護士として活躍する奏を心から励みに思っていたということも。

 

 二日後に下る判決の影響は、誹謗中傷が渦巻くSNSの世界にとって焼け石に水かもしれない。しかし、ほんの少しずつでもネットユーザーの意識を変えていくしか道はなく、たとえ小さく乱暴な一歩であったとしても、瀬尾政夫は自らを賭して踏み出したのだった。

「まぁ“新”にしてはようやったんちゃうか」

 手紙が入った封筒を見たまま物思いに耽っていた奏は、青山に話し掛けられて我に返った。

「ひょっとして今、褒めてくれました?」

「よう分からんけど、ジャンル分けしたらそうなるかな」

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source : 週刊文春 2024年6月20日号