韓国でも、10月31日に封切られてから観客が700万人を突破し、大ヒットとなっている映画『ボヘミアン・ラプソディ』。
英国の伝説のロックバンド「QUEEN」のこの話のラストシーンは、ネタバレになるが、1985年7月、ロンドンで行われた20世紀最大のチャリティコンサート「LIVE AID」だ。
QUEENはこの中で、冷戦と核戦争を批判したとされる「Hammer to Fall」も披露した。「キノコ雲の恐怖の陰で、でも、誇りを持って育ち」という歌詞があるこの曲はQUEEN のギタリスト、ブライアン・メイが子供の頃に経験したキューバ危機(1962年)などをもとに作ったといわれている。
同じキノコ雲で、11月にはK-POP史上でも記憶されるだろう出来事があった。
キノコ雲の写真がプリントされたTシャツで物議を醸した、防弾少年団(BTS)の“原爆Tシャツ騒ぎ”だ。メンバーのひとりが1年前にキノコ雲の写真がプリントされたTシャツを着ていたとして、彼らのテレビ出演は見送られ、BTSの所属事務所は日韓の被爆者に謝罪した。BTSは今さら言うまでもなく、米国ビルボードにも登場する実力と人気を兼ね備えた、世界のスターだ。
「解放」のシンボルとしての原爆と、多数の犠牲者を出した原爆
騒動は一段落した雰囲気だが、この騒ぎへの韓国の人の反応に、原爆を巡る認識の違いを痛感した。
この騒ぎが起きた後、BTSのテレビ出演見送りを徴用工判決への報復と捉え、「(10月30日の徴用工)判決に文化報復する稚拙な日本」(東亜日報11月12日)と報じるメディアもあったが、市井の人々の声を拾ってみると、「韓国では学校でも原爆投下があって日本が戦争に負けて、韓国は日本の植民地から解放されたと教えられるし、だからそう思っている。決して原爆を称賛しているのではなくて、自分たちが解放されたことに重きがある」(40代、主婦)という見方が多かった。
「解放」のシンボルとしての原爆と、多数の犠牲者を出した原爆――こうした韓国国内での認識のズレにもっとも苦しんできた人たちは、他ならぬ韓国人原爆被害者の人たちだ。被爆者2世で韓国原爆被害者協会ソウル支部長の李キヨルさんに話を聞くことができた。