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「低偏差値の大学生ほど奨学金を借りている」は自己責任か

2018/12/15
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親の年収、学歴と子供の成績には相関関係がある

 一つ目の理由には、「年収と学歴が高い親の子供ほど、学業成績が良い」ということがあげられる。これは文科省の学力テストと、お茶の水女子大学の調査(2017年)から、小学校6年と中学3年の成績が、親の年収、学歴と明確に相関関係があることが指摘されている。

 経済的に豊かで、小中高と成績が良い子供が東大、一橋、東工大、早、慶に入学している可能性が高い。

 二つ目の理由は大学進学率が上がったことだ。以前なら勉強が得意でない高校生は、高卒で就職することが多かった。

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 ところがバブル崩壊後、一貫して高卒求人が減り、その分、進学希望者が増えた。大学・短大の進学率は浪人を含め6割弱の水準まで上昇している。専門学校(と高専4年在学者)まで含めれば約8割が進学する時代だ。

国立大、私立大の授業料は上がり続ける一方、児童のいる世帯の平均所得は1996年が約782万円でピークになっている

「お金がないなら高卒で働くべき」なのか?

「だったら貧乏人の子供はFランク大学など行かずに高卒で働くべきだ」

 世間にはこのような意見があることも私は知っているが、愛のない暴論だと感じる。確かに高卒で大企業に就職できれば、大卒で中小企業に就職するより、生涯賃金が高いというデータがあるにはある。

 ただし、かつて高卒者を採用していた大企業とは大手製造業だった。ところが、現在この有利な高卒求人が激減したのだ。

 そして一般的には高卒より大卒の方が生涯賃金が高く、犯罪率、健康状態などでも有利である。WEBなどで求人広告の募集要項を見れば、その多くが「大卒以上」と書かれている。

 そんな中、多くの親は子供を大学に行かせたいと考えるのが自然だ。私も高校生向け就職支援の経験があるが、安易に高卒での就職をすすめられない。

国立大学への運営費交付金は2004年から下がり続け、一方で奨学金受給率は上がり続けている

世帯所得は下がり、授業料は上がり続ける

 親が子供の大学進学について考えた時に問題になるのが、学費の高さだ。

 国からの援助(国立への運営費交付金や私立への私学助成金)が減ることで、私大授業料は57万584円(89年)から87万7735円(16年)に上昇した。入学金まで含めれば優に100万円を超える。

 一方で子育て世帯の平均所得は782万円(96年)のピークから740万円(16年)と減少したままだ。その間、奨学金の受給率も、うなぎのぼりとなっている。

 学費の高騰について、高偏差値大学の豊かな親はあまり影響を受けない。一方で低偏差値大学の親ほど世帯所得の減少に直面しており、厳しい状況になっていると推測できる。

 期せずして、大学への助成金の削減は、低所得層へ鞭打つことになっている。「大学いじめ」は意外にも「貧乏人いじめ」につながっているのだ。

 私は、このような状況を放置してはならないと考える。少なくとも学費の高騰については解決策があるべきではないだろうか。

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