「僕はたとえばショパンを同じピアニストとして見たときに、ライバルだとさえ思っているんです。でも、同じアーティストなのに、クラシック・ピアニストは他人の曲を楽譜に厳密に解釈して、“プレゼン”するのは、一体どういうことなのかな、と常々違和感を持っていたんです」
ピアニストの枠にとどまらず、作編曲家、さらには俳優としての顔もあわせもつ清塚信也さん。そんな清塚さんが一年ぶりにリリースしたアルバム『connect』は、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンといった王道でアカデミックな音楽家たちの楽曲を、“現代の”解釈で表現した一枚だ。
「この3人の作曲家には、それぞれストーリーがあるんです。たとえばモーツァルトは可愛いらしい、華やかな曲のイメージがありますが、本当はお父さんへの葛藤もあって、とても闇を抱えていたんじゃないか。ピアノソナタ第14番は、彼の愛憎やジレンマが表現されている数少ない楽曲の一つでは、と思うんです」
逆にベートーヴェンは深刻ぶっているけれど、実際は作曲した曲をすぐに人にあげてしまうような“チャラい”音楽家なんです、と笑う清塚さん。楽曲と現代の人々とを“繋げる”ことこそが、現代のピアニストの役割だと感じているという。
「作曲家のキャラや人生観を知ると、音に対する価値観の前提が変わると思うんです。是非コンサートに来て、僕が解釈を話すのを聞いて欲しいですね」
INFORMATION
アルバム『connect』発売中。
2019年より全国ツアー。詳細は公式HP参照
http://tristone.co.jp/kiyozuka/