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娘は突然、家族の前からいなくなった

 いじめによって自殺に至った生徒の母親も話をした。2013年3月、奈良県橿原市の中学1年生の女子生徒Bさん(当時13歳)が、自宅から徒歩数分の距離にあるマンションの7階から飛び降り、死亡した。のちに、いじめを受けていたことがわかった。

「最後の会話は、『きぃつけていってきぃや』というと、娘は『行ってきます』と答えました。しかし、娘は突然、家族の前からいなくなったのです。あとで、『なんであのとき行かせたんだ』『なんで聞いてあげなかったんだ』と思いました」

 娘の死後、いじめがあったことを知ることになる。

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「クラスでの無視、仲間外れ。空気のように扱われる。暴力はないのですが、それらのことが子どもを追い詰めたのでしょう。13歳の子どもはどう対処していいのかわからなかったのだと思います」

©iStock.com

 いじめは部活動にも波及していた。クラス内のいじめ加害者の一人が同じ部活だった。

「休憩中は、円陣を組んでみんなでお茶を飲むのですが、亡くなる頃には、一人でぽつんとしていたようです。先輩に暴力をふるわれていたという証言もあります。同級生のいじめがあったために、先輩からのいじめも助長されていったのだと思っています」

学校や教委は“虐待があった”と家庭の問題に

 一方、女子生徒が亡くなった原因について、学校や市教委は家庭の問題にしようとしたという。

「当初は学校や教委は“虐待があった”と家庭の問題にしようとしました。市教委は『これは虐待であって、家庭問題。報道しないでほしい』と説明したため、13歳の子どもが亡くなったのに、報道されませんでした。しかし、クラスのいじめを知っている友達が教えてくれました。のちに、娘の手記を見つけましたが、加害者の名前をあげて『死ねるもんなら死にたい』と書いてありました」

自殺したBさんの母親 ©渋井哲也

 学校での生活を知る担任が自宅を訪ね、仲間外れにされていたことや一人でポツンとしていた様子を教えてくれたという。

「ありがたいと思いましたが、最後まで話を聞いてから、先生に抗議をしました。『先生は、娘の性格をわかってくれていますよね? 一人でいるなんて明らかにおかしい。なんで教えてくれなかったんですか』と言いました」

 しかし、学校や市教委がガードをし、担任が再び訪れることはなかった。

 生徒が亡くなって3ヶ月後、市教委の元に調査委員会が設置された。だが、市の顧問弁護士が調査委員に入っていた。公平ではなく、結論ありきと思った遺族は、この調査を拒否。調査委員会は解散となった。そして、改めて、調査委員会が設置された。遺族との共同推薦で委員を選んだ。

「娘が亡くなって2年後に報告書が出されました。『仲間外し、無視、嫌なことをいわれることが断続的に行われ、相当程度の苦痛を与えられていたことが認められる』とありました。これを見て、本当に悔しかったです。親に言える子どもと、言えない子どもがいます。学校が知っていたら教えて欲しい。なんらかの対応ができたはずです。親と情報を共有する。たったこれだけのことで防げたかもしれません。きょうは一番このことを伝えたい」