床しか見えない客席に向かって歌うアイドルたちに心が痛くなる
――いま若いアイドルに振り付けしていて、自分の時とは違うなと思うことはありますか?
槙田 明らかに違うのが、いまはアイドルの人気が落ちているということ。私が振り付けしているグループがメジャーではないというのはあるけど、スカスカのライブハウスでやってることが多くて。夢を持って東京に出てアイドルになったはいいけど、「平日の誰も来ないような時間になぜブッキングした?」というライブに毎週のように出て、床しか見えない客席に向かって歌う姿に心が痛くなるんですよ。いま思えば満杯の会場ばかりでライブさせてもらっていたPASSPO☆は恵まれていたんだなって。だから、私はいま教えてる子たちを上に引っ張りあげたいんです。関係者の方に会うと、「このグループいいんですよ」と営業してますから(笑)。
――教え子から相談を受けることもありますか?
槙田 ありますよ。「売れたいんですけど、どうしたらいいですか?」とか「大学に進みたいんですけど」といった相談には、できる限り答えようと思ってます。ただ、あまりプライベートで関わらないようにしているんです。ある程度の緊張感は必要だと思うんです。常に先生として見てほしいし、私もそうしなきゃいけない。「先生も人間なんだ」と思われるのも嫌だし(笑)、あくまで「外注」という立場はキープするようにしてます。
次のアイドルブームでコネをすべて使いますよ(笑)
――2010年以降のアイドル戦国時代は、槙田さんにとってどんな時間でしたか?
槙田 楽しかったですね。本当に活気があったし、ゆび祭りをはじめとして意味も話題性もある対バンライブも多かった。いま欠けているのはそこだと思うんです。「この時間でレッスンしたほうがいいよ!」と思ってしまう対バンライブもありますから。メンバーの稼働費やスタッフの給料を考えたらマイナスになるようなライブもあるのに、「稼働させておけばいい」という考え方でやってる運営を見ていると不思議に感じてしまうんですよ。ファンが増えるわけじゃないからメンバーが疲弊していくだけで、結局は卒業していっちゃう。
――アイドル界が縮小していく寂しさは感じていますか?
槙田 でも、絶対にまたブームはくるので。5年後くらいかな。いまは入れ替わりの時期だと思ってます。
――5年後は、槙田さんはアイドルを支える側としてブームを牽引していくと。
槙田 次のアイドルブームを狙ってグループを作りたいと思ってます。いまはそのためにキャリアを重ねて、人脈を広げているところなんです。5年後にすべてのコネを使おうと思ってます(笑)。
写真=川しまゆうこ
まきた・さこ/1993年生まれ。2009年ぱすぽ☆のメンバーに選ばれデビュー。2011年『少女飛行』でオリコンチャート、週間ランキング初登場1位に。2015年末にPASSPO☆を卒業。現在は振付師、女優として活躍。