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流行のきっかけは元K-POP女性グループメンバーの曲

 少し前までコア層の間でのみ支持されていたシティポップが韓国でも広く認知されたきっかけは、今年の6月。少女時代と並んでK-POPの代表的な女性グループとして人気を博した「ワンダーガールズ」出身のソロアーティスト・ユビンによる2曲入りシングル『都市女子』に収録の「都市愛」のティーザー(予告映像)がアップされると、「プラスティック・ラブ」に似ているという指摘が出て発表がを中止された。結果、もう1曲のシティポップに歌謡曲を加味した「淑女」のみリリース。“2018年版のシティポップ”と打ち出してユビンは話題化に成功した。

 

 7月には、女性ソロアーティストのペク・イェリンが久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」を、あえて日本語歌詞のままでシティポップ調にアレンジした曲を発表。こうしたメインストリームのアーティスト達がシティポップを楽曲に取り入れたことが、韓国で一気に知名度を上げたと推測できる。

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 なお、先に紹介した音楽ジャンル、フューチャー・ファンクのDJとして世界的に活躍している1人が、韓国人のNight Tempoだ。シティポップの価値を早くから見出し、多くの楽曲を今風にアレンジして発信し続けていることも、この流行の波に貢献していると言えるだろう。

「シブヤ系」を流行らせた韓国人サブカル層に刺さっている

 韓国でのシティポップ人気を見ていると、思い出すのが“シブヤ系”だ。韓国の音楽市場の大多数を占めるのはダンス音楽だが、その一方で、気軽に楽しめるスタイリッシュでクラフティーな音楽も韓国のサブカル層に支持されてきた。2000年代には日本の渋谷系から来た言葉そのままの“シブヤ系”が韓国で流行、2000年代後半からは、カフェでイージーリスニングができる“カフェ・ミュージック”が生まれた。

竹内まりや ©文藝春秋

 現在は、シティポップがその存在に取って代わったように見える。韓国人の知人に話を聞くと、「学生のころはX Japanのファンだった。20代はシブヤ系、今はシティポップ」(30代/男性・ベーシスト)「K-POPにはカッコいい音楽も多いが、電子音があふれていて、大人が落ち着いて聴ける音楽が少ない。J-POPの中でもシティポップはおしゃれなうえに、音楽的なこだわりもあってアーティストの数も多いから、掘り甲斐がある」(30代/邦楽ジャーナリスト)などといった声が上がった。

 “シブヤ系”の頃とは違ってネットやSNSが発達した現在、人気シンガーソングライターたちがSNS等でシティポップに言及する機会も増えて、日を追うごとにシティポップの存在感が増している。