韓国で20代のミュージシャンたちに最近どんな音楽を聴いているのか尋ねると、「日本の《シティポップ》」という答えが返って来た。

 とあるK-POPグループのメンバーは、「竹内まりやの『プラスティック・ラブ』をきっかけにシティポップを聴くようになった」と言い、また別の機会にはソウルのとある店でバーテンダーが意気揚々と、「最近韓国では、日本のシティポップが流行なんですよ」と山下達郎の「RIDE ON TIME」をBGMに流しだす。さらに別の日にカフェでお茶をしていると、ハイ・ファイ・セットが流れてきた。これらすべてが、この半年~1年以内にソウルの街で経験したことだ。

竹内まりや ©文藝春秋

 シティポップとは70年代後半から80年代に生まれた、その名の通り都会的で洗練されたポップな音楽のこと。元々は黒人音楽を取り入れ日本的に消化した音楽だが、ニューミュージックやAORも包括して指すことが多い。ここ3~4年、日本では次世代シティポップと言われるSuchmos(サチモス)、Nulbarich(ナルバリッチ)、Awesome City Club(オーサムシティクラブ)、never young beach(ネバーヤングビーチ)等々のバンドが次々と台頭し、韓国でも早耳な音楽フリークには、昨年ごろから日本の次世代シティポップが届き始めていた。しかし、筆者の実感では、約30年前の元祖シティポップのほうが、むしろ存在感を持って韓国に浸透している。

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竹内まりやの「プラスティック・ラブ」が再評価された理由

 シティポップの再流行は韓国に留まらず、世界中で起きている。2010年頃から、80年代の音楽をサンプリング音源にしたDJ音楽「ベイパーウェーブ」「フューチャー・ファンク」などのジャンルにおいて、日本のシティポップも掘り起こされ、次第にサンプリングの原曲へもスポットが当たり始めた。

 中でも、竹内まりやの「プラスティック・ラブ」は、YouTubeで2400万再生を超え、コメント欄は海外からの賞賛で埋め尽くされていた(違法アップロードのため、現在は削除)。海外の音楽メディアで紹介されたことや、アルバムジャケットに写る神秘的かつチャーミングな竹内まりやのルックスなど、シティポップの中でも「プラスティック・ラブ」がスポットライトを浴びるようになった理由は複数あるが、もっとも大きな理由はYouTubeでの拡散だろう。いまやシティポップの代名詞=“竹内まりやの「プラスティック・ラブ」”という図式になった。

2015年12月10日~2018年12月10日における「takeuchi mariya」の人気動向(「Google Trends」より)

 Google Trendsで、全世界を対象に「takeuchi mariya」のワードの人気動向を見ると、2017年夏ごろから一気に上昇。面白いのが、韓国での動向がもっとも大きいことだ。