2018年下半期(7月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。インタビュー部門の第5位は、こちら!(初公開日 2018年9月23日)。

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 14年半にわたって日曜朝に放送されてきた長寿番組『時事放談』が、この9月末でその歴史に幕を閉じることとなった。司会を務める政治学者・御厨貴さんに「放談」の意義から「テレビ天皇制」、そしてバラエティの見方まで、そのテレビ論をお伺いしました!(全2回の2回目/#1より続く)

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御厨貴さん

安倍さんはテレビに向いていない

――考えてみれば御厨さんの『時事放談』放送期間の約半分が安倍政権時代です。番組には出演こそしなかったものの、御厨さんから見て安倍首相というのはテレビに向いていますか、それとも向いてませんか?

御厨 基本的にテレビ向きではないと思います。安倍さんは中身より勢いで語る人だから、自分の思っていることを一挙に吐き出すような話し方をするでしょう。上手を取らなきゃ負ける、という意識なんだと思います。安倍さんがお師匠のようにした小泉さんの当意即妙、アドリブの巧さにはかなわないでしょうね。まあ小泉さんも話に中身があるかは別だけど、近年まれに見るテレビ政治家でしたね。

――平成期の総理大臣を振り返ってみると、小泉元首相以外にテレビ向きの人っていましたか?

御厨 まあ、橋本龍太郎さんなんかは「団十郎」って呼ばれたくらい、テレビ映えのする人ではありましたが、何せ癇癪持ちですぐ怒鳴ったりしちゃう(笑)。政治家が見せる怖い顔というのは、本当に怖いので、あれはテレビで見せちゃいけません。その点、小渕恵三さんはテレビ宰相と言っていいのかもしれない。自分のことを自虐的に「冷めたピザ」って言ってみたり、「ブッチホン」が有名になったり、うまくテレビ視聴者の心をつかんでいたと思います。それに対して森喜朗さんね。あの人はなかなかちょっと難しかったでしょう。

 

――ちょうど小泉政権の前でしたね。

御厨 で、小泉、安倍ときて、福田さん。サラリーマン的な応対で、さてテレビ的かというとどうだったか。次の麻生さんはパフォーマンスの人なんでテレビ的といえばテレビ的でした。しかし、麻生さんは最初の選挙で有権者に向かって「下々の皆さん」って呼びかけたのが語り草になっているほど“上から目線”の人だからね(笑)。テレビだとちょっと危険。民主党3代の中では野田さんが一番無難だったでしょうね。鳩山さんは「宇宙人」だし、菅さんは組合活動家の激しさが「テレビ的」だったとはいえ、「イラ菅」と言われる通りすぐ激昂するからテレビに出ちゃいけないタイプだったと思いますね。