体操コントの前には、1時間くらい準備運動した
―― ちなみに体操コントの前には、ちゃんと準備運動するんですか?
仲本 もちろんやりますよ。当日はみんなに集まってもらって、昼の12時から1時間くらい準備運動をしました。僕が一番気をつけたのは、タレントさんに絶対ケガさせちゃいけないってこと。だから無理させないようにして、このタレントさんなら、ここまでできるなって想像しながらコントを作りました。でも、それ以上にやってくれる人もいましたね。西城秀樹君とか、にしきのあきら君とか、運動神経が抜群だから。彼らは現場にきて、こっちが「えっ、大丈夫」って思うようなこともやってくれました。
―― 10代のころにやってた体操が、意外なところで役に立ちましたね。
仲本 いや本当にね。人生というのは、やりたいことができなくなった時が出発点だと思う。ずっと体操をやってきたけど、大学に体操部がなくて音楽に走った。それでドリフに入ったら、今度は音楽ができなくなって、コントをやるようになった。だからこそ思うんだけど、やりたいことはやれる時にやっといた方がいい。僕の体操コントみたいに、いつか昔の自分と今の自分が組み合わさって、活かせるときがくるからさ。
―― それが仲本さんのポジションの一つになったんですね。
仲本 そうですね。俳優の仕事にしたってさ、全体を見回して出演者の中で自分のできることを見つけるんですよ。1回稽古すると、相手役の演技がわかるからね。相手が早口だったら遅く言うとか、違う言い回しをしたりしてね。そうやってるうちに、自分のポジションもおのずと決まってくるんです。
まあ、どんなコントをやっても平気だろうね、これからも
―― 昨年、ドリフの4人で久しぶりにコントをされてましたよね。
仲本 やりましたね。やっぱり楽しいですよ。ツッコんだりするお互いの呼吸は分かってるから、余計に楽しい。これからも年に何回かやりたいな。
―― 高木さんも「4人で昔のネタをやりたいね」っておっしゃってました。
仲本 ほんと? 珍しいねぇ(笑)。まあ、どんなコントをやっても平気だろうね。そのときの感覚は覚えてるからさ。
―― これからの夢って何でしょうか?
仲本 僕ももう77歳だからさ、芝居にコントに音楽、好きなことやって暮らしたいですよ。一つだけ夢と言えば、本を書きたいですね。これまで仕事をしてきた中で、たくさんの素晴らしい人に出会ったから、その人たちのことを書いておきたい。
―― ドリフメンバーを含め、さまざまな出会いから得た仲本さんの人生訓って何でしょうか。
仲本 ヘタに流れに逆らわないで、身を委ねるってことかな。このお店だって、今のカミさんとやっているわけだけど、夫婦だって流れに身を任せ合うような関係なんじゃない? なるようにしかならないもので、お互いに何かを強要したり、求めてもストレスになるばっかりだと思うよ。だから、人生って無理せず自然でいいんですよ。自分の立ち位置ってものもそうだよ。人との出会いを大事にして、流れに身をまかせていれば、きっといい巡りあわせがあるんじゃないかな。
なかもと・こうじ/1941年東京生まれ。東京都立青山高校では俳優の橋爪功と同級生、2年上には柳家小三治がいた。学習院大学在学中から音楽活動を始め、のちにザ・ドリフターズに参加。現在は俳優としても活躍するほか、東京・緑ヶ丘で「仲本家 JUNKAの台所」を経営している。
写真=鈴木七絵/文藝春秋
2018年インタビュー部門BEST5結果一覧
1位 高木ブー 85歳 今だから語る「長さんは僕にだけ、愚痴をこぼした」
http://bunshun.jp/articles/-/10194
2位 77歳 仲本工事が語る“ドリフ秘話”「加藤は天才、志村は秀才」の理由
http://bunshun.jp/articles/-/10193
3位 “佐藤健も凍りついた”石橋静河「『半分、青い。』のより子さんを悪役とは思えない」
http://bunshun.jp/articles/-/10192
4位 あだ名は「売れない子役」だった伊藤沙莉の“いじめっ子人生”
http://bunshun.jp/articles/-/10190
5位 「SMAP中居発言はすごかった」政治学者・御厨貴が語る“テレビと政治とバラエティ”
http://bunshun.jp/articles/-/10188