2018年下半期(7月~12月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。ライフ部門の第3位は、こちら!(初公開日 2018年8月22日)。
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「どうして兄を家に置いているのか? 追い出せないのか?」
と聞かれたことがあります。
私が育った家庭は長年、兄による家庭内暴力に苦しめられていました。いや、過去形ではなく、兄が28歳になった今でもそれは続いているんですが。料理人の父と理容師の母との間に生まれた兄と、一つ年下の私の4人暮らし。阪神淡路大震災で家が倒壊した影響もあって、決して裕福な家庭というわけではありませんが、両親は私たち子供にとって不自由のない生活を与えてくれました。
ときには出血をともなう怪我をすることも
平穏な生活が崩れ始めたのは、兄が中学に上がった頃だったでしょうか。気に入らないことがあると、どうしてか執拗に私のことを殴りつけたり、物を投げつけてくるようになりました。それまでも兄妹喧嘩をすることはあったのですが、さすがに相手が中学生の男子ともなると、女の私の力では敵わず、喧嘩というよりは、一方的に暴力を受けるような形に変化していったのです。
兄の暴力は年齢とともに次第にエスカレートしていき、私だけでなく母にまで暴力を振るうようになりました。私も母も身体中にアザを作ることはしょっちゅうで、ときには出血をともなう怪我をすることもありました。
兄が暴れるきっかけは、「お前の顔つきが気に入らない」「イライラする」「自分の思い通りにならない」など、いつも些細なことでした。お金をせびって、拒否をされれば殴ったり、家中の物を壊したりすることも頻繁にありました。
母は殴られる覚悟で兄に掴みかかったが……
父が仕事でほとんど家にいなかったことも、兄の暴走を助長する要因の一つだったのかもしれません。母は、成長して日に日に体が大きくなっていく息子を脅威に感じていたのだと思います。彼女はいつも「私が生んだ子なのだから、私がなんとかしなければならない」と自分に言い聞かせるように話していました。
兄が暴れたり私のことを殴り始めたりすると、母は殴られる覚悟で兄に掴みかかって制止しようとしていたのですが、その行為は兄の怒りを助長するだけで、かえって酷い暴行を受けることになってしまったのでした。