年末が差し迫ってくると賑やかだった“若手の巣窟”鳴尾浜球場から、日を追うごとに選手たちが消えていき、より寒さが身に染みてくる。次々に故郷へ帰省していく若手選手と「今年も1年取材ありがとう」「良いお年を」なんて言葉を交わしながら背中を見送る。毎年のことだが、今年も「終わり」が近づいてきたと実感する。

 チームは最下位に沈み、指揮していた金本監督も電撃辞任……。担当記者として暗い話題が先に口をついて出てしまうが、選手個々では、今でも心に残る、忘れられない出来事もいくつかあった(個人的には、より阪神、スポニチを身近に感じてもらうため「チャリコ遠藤」の名でツイッターアカウントも開設して、例年より刺激的な1年でした)。

 ということで“チャリコ的”に印象深かった2018年のタイガースの出来事を、スポニチ紙面と合わせて振り返っていきたい。

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プロ14年目・能見がプロ通算100勝

 開幕ローテーション入りしていた能見篤史が2軍降格したのは5月12日。前日の広島戦で4回9失点KOされ、翌朝から鳴尾浜での再調整を命じられた。本人も「もうチャンスは無いと思っていた」と振り返るように、14年目左腕が厳しい立場に追い込まれた中、金本監督からの“直電”が転機になった。「中継ぎをやってくれないか」という打診を快諾して、リリーフに本格転向。6月上旬から1軍に再昇格すると、抜群の安定感を誇示。「先発の時と翌日の体の張り方が全然違うわ」と戸惑いを見せながらも、積み重ねた経験と、増やしてきた引き出しを駆使して、終わってみればリーグ屈指のリリーバーに生まれ変わった。6月28日のDeNA戦で節目の通算100勝にも到達。長年、先発でエースを張ってきた男は、“新天地”で手にした節目の1勝に「リリーフ、バッター、いろんな人に支えてもらってきたんでね」と静かにうなずいた。強調した周囲への感謝の言葉に、人柄がにじんだ。

プロ通算100勝をマークした能見篤史 ©文藝春秋

“ゴリラポーズ”陽川の躍動

「ウホウホ」と言わんばかりに、チームメートが笑顔で胸をポコポコと叩く。今年、定着した「ゴリラポーズ」は、本塁打を放った際にナインが陽川尚将を出迎える儀式だ。1軍で初めて披露したのは6月26日のDeNA戦。7回にエドウィン・エスコバーの直球をバックスクリーン右へ運ぶ2号3ランを放った。直前に放った一塁へのファウルフライを相手が落球する幸運をしっかりとモノにした。大卒のプロ5年目でチーム内では梅野隆太郎、秋山拓巳、岩貞祐太、岩崎優、原口文仁と同じ27歳。1軍の実績では同世代の面々に劣っていた未完の大砲が75試合で6本塁打、48打点と意地を見せたシーズンだった。ちなみに、体格なのか、顔なのか、ゴリラポーズの由来は定かでないが、本人は「バナナは好きです」と力強く宣言。シーズン中、球団内では「ゴリラグッズ」発売のプロジェクトも密かに進んでいたと聞く……。来年は、聖地で「ゴリラタオル」を振り回す虎党の声援に応えるアーチを放つ姿を見てみたい。