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金正恩の妻と妹、そして……北朝鮮“3人の女”が日韓関係のカギを握る

2019/01/03

genre : ニュース, 国際

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金正恩に禁煙を迫る「妻」

 もう1人、韓国側が期待しているのが、正恩氏の妻・李雪主(リ・ソルジュ)氏だ。「与正氏と李雪主氏は、宴会で見ている限りとても仲がいい。2人が正恩氏を支えているという印象だ」(韓国政府関係者)という。

金正恩・党委員長と李雪主夫人 ©AFLO

 李雪主氏は、正恩氏を「チョエ ナンピョン」と呼んでいた。「私の夫」というへりくだった朝鮮語だ。

 この発言は、18年3月5日に平壌で韓国の特使団と会食した際に、飛び出したという。最高指導者の正恩氏は、通常「元帥様」と呼ばれるが、妻は、そんな肩書きにこだわらず、ごく普通の家族のように振る舞い、話した。同じテーブルに座っていた5人の特使団は、この率直な物言いに顔を見合わせたという。

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 さらに特使団が驚いたやりとりがあった。特使団が愛煙家の正恩氏に対して禁煙を勧めた時のことだ。

 冗談交じりの会話だったが、李雪主氏がすかさず割り込んできて「いつも禁煙してくれと頼んでいるのに(夫は)聞いてくれない」と小言をこぼし、その場の雰囲気を一気に和らげたという。

過激な行動をいさめる3人の女性

 もっとも重要な正恩氏の考えは、いまだによく読めないところがある。経済発展を実現するため、核放棄をする決意をしているのか。それとも、米国が経済制裁を緩和しないままなら、再び対決路線に戻るのか。年明け1月1日に正恩氏が発表した新年の辞でも、核問題について踏み込んだ発言はなかった。

 正恩氏の心を動かしているのは正恩氏周辺にいる女性2人、いや与正氏の右腕である金聖恵氏を含む3人だろう。父、金正日総書記は私生活が乱れていたが、それを見ていた正恩氏は、家族をことのほか大切にしているとされる。

 女性の視点からは、穏やかに家庭生活が過ごせる「普通の国」にしてほしいと素朴に望んでいるのではないか。正恩氏の過激な行動をいさめ、常識的な指導者として振る舞うようアドバイスしている――そう考えると、2017年11月以降、北朝鮮は挑発行動を控え、対話路線を維持して来たのも説明がつく。

 19年も、韓国との関係改善を進め、米国との対話にも応じていくだろう。

 日本政府も正恩氏と周辺の女性たちの関係を慎重に分析し、今後の出方を予測する必要がありそうだ。

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