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12時になると、みんなで興奮してました

――実際に30代の読者や、女性読者を掴むことはできたのですか?

 読者アンケートを取ったら女性が半数を超えたことがありました。それは嬉しかったですね。加えて、東洋経済オンラインは会員登録もなし、記事配信もヤフー!などにどんどん出して、オープンな環境でとにかく読んでもらうようにしたのですが、ヤフー!配信によるインパクトはものすごく大きかったです。

 たとえば、ピークタイムの12時台にヤフー!のトップページに掲載されると、アクセス数が爆発するのです。そのときは、読者数のリアルタイムデータをグーグルアナリティクスで見ながら、みんなで興奮してました(笑)。今この瞬間、数十万人もの人がこの記事を読んでくれているのかと思うと、アドレナリンがどんどん出てきました(笑)。今のNewsPicksは会員制で、ヤフー!など他メディアへの記事配信もしていませんので、リアルタイムのPVで一喜一憂することはなくなりました。

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――他社配信など、自社ブランドを大事にされてきた出版社で理解を得るのはなかなか難しそうですが。

 私はとにかく調整が苦手で、どちらかと言うと、独裁者タイプです(笑)。最低限の説明責任を果たしたらあとは勝手に突っ走ってしまうんですよね。

 東洋経済新報社はとにかくリベラルでおだやかな気風です。私も在籍中にスタンフォード大学に留学しましたが、社員の海外留学を奨励するくらい自由な空気でした。そんなカルチャーだったからこそ、「東洋経済オンライン」であれほどチャレンジさせてもらえたのだと思っています。その意味で、わたしは運がよかったと思います。

 逆に言うと、私は伝統的な企業の管理職はまったく向かないと思います。すぐ左遷されるでしょうね(笑)。これは日本企業批判でもなんでもなく個人的な資質の問題で、この年になると自分はどんな人間かさすがにわかってきます。NewsPicksは多様なメンバーがそれぞれ個人の判断と責任で仕事をするので、私が細かいことを言わなくても、自律的に動いてくれます。そうしたメンバーたちの姿勢に助けられてばかりです。

ささき・のりひこ NewsPicks編集長。1979年福岡県生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。スタンフォード大学大学院で修士号取得(国際政治経済専攻)。東洋経済新報社で自動車、IT業界などを担当し、2012年11月に「東洋経済オンライン」編集長に就任。2014年7月から現職。著書に『米国製エリートは本当にすごいのか?』『5年後、メディアは稼げるか』『日本3.0 2020年の人生戦略』。

日本3.0 2020年の人生戦略

佐々木 紀彦(著)

幻冬舎
2017年1月25日 発売

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写真=釜谷洋史