下位の選手は最後までモチベーションを下げさせない
山川は今季の箱根駅伝では、関東学生連合チームの指揮を執る。予選敗退校のエースが集まると言えば聞こえは良いが、「寄せ集め」と揶揄されることも多い。前回大会は最下位相当の21位に沈み、前々回大会も20位相当と苦戦が続いている。
「最初は僕も自信はありませんでした。でも、予選会の応援に来てくれていたウチの大学の4年生の親御さんから『チームで箱根に行くことはできなかったけど、今年1年間やってきた選手が監督に持ってきてくれたプレゼントですよ。運営管理車に乗れて、一足先に箱根路を見られるというのは、彼らの頑張りの結果なんじゃないですか』と言われて、『これは本気でやらないとな』と思ったんです」
これまでは箱根駅伝予選会の順位で出走するランナーを決めることが多かったが、山川は、エントリーされた16人のうち、実際に走る10人の選考方法を予選会の成績上位から8人、残りの2人は11月に行われた10000m記録挑戦競技会の成績で決めるという手法を取った。上位の有力選手は本番に向けてピーキングを優先させ、下位の選手は最後までモチベーションを下げさせないための工夫だった。選考方法からも本戦を記念参加で終わらせないという想いを感じる。
12月7日~9日まで麗澤大で行われた合宿では、選手たちだけでミーティングを行い、本戦での目標とスローガンを決めさせたという。目標順位はシード権獲得圏内の10位以内、スローガンは「タツヤを漢に」に決まった。
「出るからにはやってやろう」
「監督としては、目標は何でも良いんです。とにかくチームとして『次の走者のために頑張らないと』と思えるようになることが大事です。そういう雰囲気づくりができるかが大切で、ミーティングもその一環。走る選手も走らない選手も含めた16人で、ひとつのものを作り上げられればと思っています」
年末には2度目の合宿も行い、そこでは山川お手製のモチベーションムービーも公開され、選手達の結束もより固まったという。
連合チームといえば思い出されるのが、総合4位に食い込んだ2008年のケースだ。チームを率いたのは、当時まだ箱根駅伝出場経験のなかった青学大の原晋監督。その後の躍進ぶりは周知のとおりだろう。
非関東圏の中京大学出身で、箱根駅伝経験がないままに学連チームの指揮を執るなど、原監督との共通点も多い。そんな話を振られると、山川は恐縮しながら苦笑いを浮かべる。
「けっこう原さんの例と比較されるから、それが怖いですね(笑)。比べられても『全然、違うよ』と思います。恐れ多いですよ」
だが、箱根路での目標を尋ねると、きっぱりとこう宣言してくれた。
「出るからにはやってやろうという気持ちはありますよ。ひとつでも上の順位を目指したいと思います」
そう力強く語る目力は、箱根5連覇を目指す指揮官にも決して負けてはいなかった。