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もうすぐ72歳 高田純次「こんな夢、語っちゃダメですか?」

高田純次「適当じゃない」インタビュー #3

2019/01/01

一番難しいのは、普通に歩くこと

―― シリアスな役柄といえば、テレビ朝日『刑事・横道逸郎』(2018)で主演を務めるなど、シブい役者としての仕事も増えてますよね。

高田 僕が役者として何かいうのはおこがましいなあ。以前、映画の主役をやったことがあるんですよ。『ホームカミング』という作品。監督が白羽の矢を立ててくれたのはうれしかったんだけど、公開の前日が3.11の震災の日で、イベントも何もかも全部ダメになった。僕に主役は早かったんでしょう。神様が「まだ主役は早いぞ」って言ってくれたような気がしましたね。

―― 役者の仕事をするときに大事にしてることってありますか?

高田 まずはセリフを覚えることですよね。当たり前か(笑)。監督や演出家によっても違うよね。セリフも一字一句間違えないでくれっていう人もいれば、意味が同じなら自由にさせてくれる人もいる。

 

―― 縛りがあるとやりにくいですか?

高田 そういうのは慣れていかないとね。タバコ吸ったり、ポケットに手を突っ込んだりするのがダメって言われるときもある。演技のときにタバコ吸うのは、絵になるから楽なんですよ。相手の話を聞いてるときも、手をどうしたらいいかが難しい。高橋英樹さんと共演している「西村京太郎トラベルミステリー」に出るときは、なるべくポケットに手を入れないようにしてます。一番難しいのは、普通に歩くことかな。

―― コンビを組む高橋英樹さんは、高田さんのことを「芝居に関してはすごく真面目な人」とおっしゃってるようですね。

高田 恐縮してしまいますね。僕のやっている役は、もともと愛川欽也さんがやっていたものだから型ができているんですよ。だから、自分なりにやろうとすると余計に難しいですよね。

 

ほとんど悪人役のオファーをいただいたことがないんですよ

―― これまで共演した俳優で、この人すごいなと思った方はいますか?

高田 蟹江敬三さんの「自然さ」がすごかったなあ。「十津川警部」に弁護士の役で出られたとき、本当にずっと弁護士やってきた人のように書類を出したりしながら自然にセリフを言ってましたね。こういう当たり前の動作こそ、演技となると難しいんです。

―― 今後、挑戦してみたい役はありますか?

高田 やっぱり悪役が面白いよね。ただ、僕はどうしても善人のイメージがあるみたいで、ほとんど悪人役のオファーをいただいたことがないんですよ。いい人ってわりとパターンが決まってるけど、悪にはいろんなパターンがあるでしょ。いつかやってみたいんですけどね。

 

―― もし今、舞台の仕事が来たら、出てみたいという気持ちはありますか?

高田 時間があれば、やる気はありますけどね。今のところ最後の舞台は、竹下景子さんと『ラヴ・レターズ』に出たときですね。

―― パルコ劇場で長年上演している、2人だけの朗読劇。高田さんは、1992年に出演しています。

高田 「1日だけの公演で、本読むだけで稽古はしません」と言われたから出たんですよ。しかもお相手が竹下さんでしょう。断る理由はないと思って、お受けしましたけど、お客さんの前で本を読むのは難しいね。最初は普通に読んでたんだけど、だんだん恥ずかしくなってきて、本で顔を隠すようになっちゃって。竹下さんから「またやりましょう」って言っていただきましたけど、僕はもう恥ずかしくて「勘弁してくれ」って感じです(笑)。

 

―― 70代の境地に立った高田さんの舞台はいつか観てみたいです。

高田 僕らが舞台に立っていた頃とは、演劇の状況も変わったからなあ。だって、大学出て芝居やお笑いをやる人は少なかったですよ。大学を出た役者さんって、山村聰さんとかさ。

―― 東京帝大出身ですね。

高田 今は、けっこう大学出の役者さんも多いわけでしょう。俺なんか高校のクラス会に行くと必ず「高田だけが大学に行けなかった」ってからかわれるの。70になってもだよ(笑)。