青木宣親の電撃復帰に始まり、五十嵐亮太の衝撃復活に終わった2018年。「96敗」という前年の悪夢を払拭して、見事に2位に躍進した東京ヤクルトスワローズ。おかげで心穏やかに2019年という新たな年を迎えている。

今こそ、古田敦也の名言を思い起こせ!

 さて、文春野球新年最初のお題は「2019年の展望を!」とのこと。各球団それぞれ、首脳陣人事も確定し、18年ドラフトで指名された選手たちの入団会見も終わり、FA戦線も一段落。新外国人選手の獲得も発表され、12球団の19年シーズンも着々と準備が進んでいる中、改めてセ・リーグ6球団の戦力を概観してみる。

 まずは巨人。……もはや、笑うしかない。原辰徳はまたも監督に復帰し、丸佳浩、炭谷銀仁朗、岩隈久志、中島宏之が大挙して移籍した。なりふり構わぬ大補強。いやはやすごい。ただただ笑うしかない。けれども、ヤクルトファンならば、「キャッチャー界のセコム」こと、かの古田敦也の名言を覚えていることだろう。

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「巨人が大補強をした年こそ、ヤクルトが倒してきた。過去の歴史がそれを証明している」

 さすが古田さん! 僕の頭には1995年シーズンのことが鮮明に浮かんでいる。前年四番の広沢克己(広澤克実)、五番・ハウエルがそろってヤクルトから巨人入りしたあの年のことだ。この年の巨人は三番・松井秀喜、四番・落合博満、五番・広沢、六番・ハウエルという超強力打線を擁しながら結局は3位に終わった。一方のヤクルトはセ・リーグを制し、さらにはオリックスを倒して日本一に輝いた! オマリー、どうもありがとう!

 あるいは1997年シーズンを思い出した人もいるかもしれない。この年の巨人は西武から清原和博、近鉄から石井浩郎、ロッテからはヒルマンが加入。他球団の主力選手が一堂に会したものの、それでもシーズン4位に終わった。もちろん、ヤクルトは1位。さらに、西武を撃破して日本一に輝いた! ホージー、どうもありがとう!

 古田さんの発言には、確かな根拠と揺るぎない説得力があるのだ。

今こそ、古田敦也の名言を思い起こそう ©文藝春秋

もちろん、ヤクルトも補強はしたけれど……

 つい興奮して、巨人に文字数を費やしすぎたが、広島は丸が抜けたとはいえ、それでもリーグ3連覇の実力はあなどれない。阪神にはオリックスから西勇輝が加入したし、何気に中日からガルシアが加わっているのが不気味だ。その中日は何と言っても根尾昂クンの加入が大きい。スケールの大きな高校卒ルーキーの活躍は、敵ながら楽しみだ。そして、DeNA。昨年のように先発投手陣に故障者続出ということはないはずだ。個人的には富山サンダーバーズ・伊藤智仁前監督にじっくりと指導を受けたことで、NPB復帰を果たした古村徹のピッチングには注目したい。

 さて、ヤクルトはどうか? 冒頭で述べたように18年末に飛び込んできた五十嵐亮太の古巣復帰を筆頭に、ソフトバンクから寺原隼人が入団してきた。さらに、秋吉亮、谷内亮太を手放す代わりに、日本ハムからは16年新人王の高梨裕稔と太田賢吾が加入することになった。五十嵐、寺原、高梨、太田、いずれもパ・リーグからの移籍組だ。19年もまたパ・リーグ出身者たちによる「パリコレ」に期待したい。

 新たな助っ人はスコット・マクガフ(ロッキーズ傘下)と、ソフトバンク・スアレスの兄であるアルバート・スアレス(ダイアモンドバックス傘下)の両投手が加わり、ドラフト1位は国学院大学の清水昇。手元にある『野球太郎』(廣済堂出版)によると、「正確なコントロールで安定感抜群の右腕」とある。ドラフト2位の中山翔太(法政大)は「燕の新大砲」らしいし、5位の坂本光士郎(新日鐵住金広畑)は「投球術を覚えれば一気に飛躍も」とのこと。ぜひ、覚えて覚えて覚えまくってほしい。

 ……と、もっともらしい戦力分析のような原稿を書いているけれど、正直なところ新人選手、新外国人助っ人は水物だ。まだキャンプも始まっていないからこそ、好き勝手にあれこれ言えるのだろうし、年が明けたばかりの今ならば、「ああだ、こうだ」と楽観的な夢を見ていてもいいはずなのだが、実は僕の心はそれほど澄み渡ってはいない。いや、むしろ不安で、不安で仕方ない。なぜなら、小川淳司監督、宮本慎也ヘッドが、ともに「19年は不安しかない」と語っているからなのだ……。