未完成な集団が、少しずつ成長していく1年に
昨年秋、松山で行われた秋季キャンプにおいて、小川淳司監督、宮本慎也ヘッドコーチにロングインタビューをする機会をいただいた。それぞれに、「19年の意気込み」を尋ねたのだが、両者ともに「不安しかないです」と語っていた。
小川監督は「選手は努力しているし、技術も向上している」と前置きした上で、「選手が努力して技術が向上した結果を、自分がきちんと引き出すことができるのか? そして、勝利に結びつけることができるのか?」と不安を隠さなかった。
一方の宮本ヘッドは「96敗から2位になったといっても、優勝争いに絡んだ上での2位ではないから」とキッパリ。続けて「他球団も当然、補強もするし、研究もしてくるわけです。今年(18年)のように、うちに対してもノーマーク状態なわけじゃない。もう、不安しかないですよ」と、率直な心境を吐露してくれた。
両者の言葉を聞きながら、実は僕も猛烈な不安に陥ってしまった。17年オフは悪夢の「96敗」という現実を受けて、「これ以上、悪くなることはないだろう」と、半ばやけっぱちで開き直ることができたけれど、18年オフはまったく違う。なまじ「2位」という成績を残したことで、「次は1位だ!」という前向きな気持ちよりも先に、「何とか今年もこの位置を死守できないものか」と守りの心境になってしまっているのである。
……いかん、いかん、誠に遺憾。不安なときこそ、原点に立ち返らなければ。我々はまだまだ発展途上のチームなのだ。90年代野村ヤクルトのような完成された大人のチームではないのだ。これからいくつもの試練を乗り越えて、少しずつ成長していく集団なのだ。いまだ何も手にしていないのに、失うことを恐れるバカがどこにいる? ここにいた。反省せねば。そして、ここで本題に戻る。2019年のヤクルトは「未完成なチームが、完成形を目指して少しずつ成長していく一年」だと、僕は位置づけたい。
長いペナントレース、さまざまな試練が押し寄せてくることだろう。それでも、小川監督、宮本ヘッドをはじめとする首脳陣たちは根気強く、我慢強く浮上のときを待ち続けるだろう。故障者が出るかもしれない。期待の新戦力がまったく当てにならずに肩透かしを食らうかもしれない。それでも、シーズン前にはまったく期待もしていなかった若手が一気に台頭してくるかもしれない。故障がちだったベテラン投手がまさかの復活を遂げるかもしれない。何が起こるかわからないのがペナントレースであり、野球なのだ。まさに、野球はドラマだ、人生だ。
あと1カ月もすれば、早くもキャンプが始まる。冬来たりなば、春遠からじ。球春到来まであとわずか。今年も一喜一憂しながら、たっぷり野球を楽しみたい。野球のある幸せな暮らし。傘の花咲く、新たな夜明け。今年もどうぞよろしくお願いいたします!
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