【質問】
 ネット通販で、2万円や3万円台のノートPCをよく見かけます。見た目は普通のノートPCと変わらないみたいですが、安すぎてなんだか怪しいです。あれは買っても大丈夫なんでしょうか? 10万円前後のノートPCとは何が違うんでしょう?

【回答】
 一般的にノートPCといえば、型落ちではない現行製品であれば数万円~10万円台半ば、最新規格を詰め込んだハイエンドモデルだと20万円台ということも珍しくありません。その一方、海外メーカー製を中心とした2~3万円台の格安ノートも、ネット通販を中心に多く市販されています。

 これらの多くは海外メーカーの製品ですが、数年前に一世を風靡した「ネットブック」に比べると、ストレージやディスプレイ、キーボードなど、実用レベルに仕上がっていることが特徴です。では上位のノートPCとはいったいどこが違うのか、購入にあたってはどこに気をつけるべきか、3つのポイントを見ていきましょう。

ADVERTISEMENT

今回サンプルとして使用するのはASUSの「Vivobook E200HA」。実売価格3万円台と格安ながら、このクラスの製品としては珍しく4GBのメモリを搭載した、Windows 10 Home搭載のノートPCです
キーピッチは実測18.5mmと広いため長文の入力も問題なく行えます

要注意の宣伝文句「ネットを見る程度なら実用レベル」の本当の意味

 まず最初にチェックするべきポイントはメモリの容量です。メモリの容量に余裕がないPCは、なにかにつけて「ネットを見る程度なら実用レベル」という表現で紹介されることがあります。これは、比較的負荷が軽いネットの閲覧であればギリギリ耐えうるものの、それ以外の作業はお世辞にも快適とは言えませんよという、書き手から読者に対する遠回しな警告のようなものです。

 本来、PCの処理速度を決める大きな要因はメモリよりもむしろCPUです。しかし、高性能なCPUを搭載するとなるとどうしても価格の上昇につながるため、今回紹介しているような2~3万円台の格安ノートでは多くを望めません。それならばメモリの量に注目したほうが、動画の再生が頻繁にストップしたり、複数のソフトを同時に起動しようとしただけで固まって操作ができなくなる現象を軽減できるというわけです。

 なかには、「いや、ネット以外の用途にはほとんど使わないし、動画も見ないし、メモリも最小限でいいや」と考える人もいるかもしれませんが、そこにはいくつもの落とし穴が……。例えばWindows PCにつきものの「Windows Update」は、高性能ノートであれば数分で終わりますが、CPUが非力かつメモリの容量が少ない格安ノートPCだと数十分、下手をすると何時間もかかってしまうこともざらです。その間はほかの作業ができなくなってしまいます。

 とくにWindows 10を実用的なスピードで動かすには、メモリ2GBでは確実に非力です。本来なら8GBや16GBはほしいところですが、そうなると標準的なノートPCと変わらない価格になってしまいます。これから低価格ノートを探す方は、今回紹介している「Vivobook E200HA」のように、最低でも4GBを搭載しているモデルを選ぶとよいでしょう。たとえCPUが非力でも、これならばまだ活用のしがいがあります。

実売10万円台のノートPCであれば、メモリは8GBや16GBを搭載することも珍しくありません。これはレノボの「ThinkPad X1 Carbon」のメモリ搭載容量を表示した状態
今回紹介している「Vivobook E200HA」は4GBのメモリを搭載していますので、メモリが2GBに抑えられている他の格安ノートと比べると、そのアドバンテージは一目瞭然。格安ノートはメモリの増設や交換が難しいため、購入の時点でよくチェックしておくべきでしょう

低めの解像度で本当に大丈夫? 何が起きるのか知っておこう

 次にチェックすべきなのは液晶画面です。ここでは2つの点に留意しましょう。

 まずひとつは解像度。現在主流となっているノートPCでは、フルHD(1920×1080ドット)以上の解像度が当たり前ですが、今回紹介しているような格安ノートはそこまで高い解像度を持つ製品はほぼ皆無で、その多くが1366×768ドットという、やや低めの解像度です。

 これはつまり、広い面積が収まりきらず、ウェブページなどでは天地が窮屈に表示されることを意味します。一画面に表示できる面積が小さいために、何度もスクロールしないとページの下までたどりつけません。また、小さな文字で細かいディテールを表示するのも苦手です。

 もっともこの液晶パネルの解像度も、前述のCPUと同様、あまりに多くを望むととても2~3万円の範囲には収まりませんので、予算を取るか、スペックを取るかがひとつのポイントとなります。どうしてもフルHD(1920×1080ドット)以上の解像度という条件が譲れない場合、現時点では、格安ノートPCはすっぱりあきらめるべきでしょう。

比較対象のレノボ「ThinkPad X1 Carbon」(解像度1920×1080ドット)でサイトを表示したところ。中央の「新着記事」の下にある「特集」、さらにその下のブロックの見出しも一部が表示できています。(サンプル画面は旧サイトです)
こちらは「Vivobook E200HA」(解像度1366×768ドット)で同じサイトを表示したところ。「新着記事」は表示できるものの、直下の「特集」はほとんどが隠れた状態になってしまっています。画面の解像度が低い格安ノートではよく見られる現象です

もう一つの盲点、「視野角」にご注意

 もうひとつはパネルの品質です。最近は液晶パネルの品質は全般的に向上し、かつてのように「IPSパネルは可、それ以外の方式のパネルは見送り」というほど単純な状況ではなくなっていますが、それでもやはりパネルによって、視野角の広さ、画面の中央から遠ざかった四隅の暗さには歴然とした差があります。

 実機に触れる機会があるならば、角度を変えつつ画面を眺めて、どの程度までなら色の変化なしで見られるかをチェックしたいところです。角度を変えた時の色の変化があまりに大きいと、真正面から見るぶんには問題なくとも、膝の上にのせて上から覗き込んで使う姿勢や、隣りにいる人にノートPCの画面を見せながら作業する場合に、画面がよく見えない、色合いが違って見える、といったことが起こりがちです。

 
比較対象のレノボ「ThinkPad X1 Carbon」を、正面および斜め下からあおったアングルでみたところの比較。多少は暗くなるものの、色の変化はとくに見られません
 
こちらは「Vivobook E200HA」。正面から見た場合と比べ、斜め下からあおったアングルでは色がかなり変化してしまっているのが分かります。いわゆる格安ノートではこれでもまだ問題がない部類で、もっと極端に色が変わる製品もあります

格安ノートPCだからこそ「どこで買うか」が重要

 最後にもうひとつ、格安ノートPCを選ぶに当たってはとても重要なポイントがあります。製品のスペックとは無関係になのですが、見落としやすい盲点……それは、製品が不良品だった場合、とくに初期不良時のサポートについてです。

 製品が安価であるということは、部品代などの原価を低く抑えるだけでなく、低品質や不具合と思しき症状のある製品をチェックする工程を省略し、歩留まりを高くして価格を抑えているケースが多々あります。こうした製品ではユーザの手に渡ってから不良であることが発覚し、返品交換を余儀なくされるケースが多発します。全数検品の工程を増やすのに比べてトータルでのコストは安くつくため、このような方法を取るメーカーも少なからず存在します。

 こうした場合にユーザが気をつけるべきなのが、仮に初期不良だった場合、どのくらいスムーズに返品交換が行えるかです。製品をメーカーの窓口に送って初期不良であることを確認してもらい、そこで修理してもらって戻ってくるまでの間に、1ヶ月や2ヶ月もかかってしまうようでは、その間いっさいの作業ができないだけでなく、修理完了までに市場価格が下がると、結果的に高い相場で買わされたことになってしまいます。これではまさに「安物買いの銭失い」。

 有効なのは、初期不良の判定をメーカーに任せず、自らサポートしてくれる販売店を選ぶことです。このような販売店であれば、電話口での症状の申告だけで初期不良かどうかを判断し、認められた場合は交換品を即出荷してくれますので、1~2日程度のロスで済みます。製品にもよりますが、今回紹介しているような格安ノートでは、多少割高になってでも、こうした販売店を選ぶべきでしょう。

 逆にユーザとしては、販売店の対応期間が過ぎてから初期不良であることが発覚した、というケースだけは避けたいところ。そのため、購入してからしばらく未開封のまま放置しておいた……というのではなく、すぐにセットアップして使えるタイミングで、製品を購入することが望ましいといえます。国内のサポート体制があまり充実していないことの多い海外メーカーの格安ノートPCでは、なおさらこうした対応が重要になることでしょう。

初期不良の判定をメーカー任せにすると、何週間、何ヶ月も待たされることがあります。それゆえ初期不良については独自で交換対応してくれる販売店がベストです(画像はソフマップドットコム)

【今日のおさらい】

ポイントその1:まず何よりもメモリの容量をチェックすべし。

ポイントその2:液晶画面の解像度と視野角をチェックせよ!

ポイントその3:初期不良を独自にサポートしてくれる販売店を選ぼう。