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人の心の弱さと残酷さがあぶり出される

 心の痛みを人はどう克服し、乗り越えていくのか。内心で起こるちいさな変化を、これほど繊細に捉えた表現には、なかなかお目にかかれない。展示をひと通り観終えると、事細かに心境描写がされた長大な小説を読んだような気分になる。アートの展示というかたちで、かくも豊かなストーリーが語られていることにも驚かされる。

Sophie Calle
Exquisite Pain, 1984-2003
© Sophie Calle / ADAGP, Paris 2018 and JASPAR, Tokyo, 2018

 第2部では、他人の不幸をいくつも聞き込むことによって、ソフィ・カル自身の抱えた悲しみがすこしずつ癒されていく。そうか不幸とは、ぶつかり合うと相殺されるものなのか。ということは、映画や芝居で人が悲劇を観て楽しむのは、自分の抱えた辛さを相対化して消し去るためでもあったのか。

 人の心に巣食う残酷な一面を見せつけられるような思いがしてドキリとさせられたり、心の動きのしくみを垣間見た気がして納得したり。作品の前に立っていると、視覚が刺激されるのはもちろんのこと、心と脳もフル稼働して、なかなか忙しい展覧会だ。