昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

2019/01/13

「じじい、この野郎!」と追いかけてやろうかと思ったんですが

 そうしたら、そのおじさま、突然「チェッ!!!」と舌打ちをし、私に130円(スポーツ新聞の料金ぴったり)を投げつけて、ガラスのドアを蹴り、スポーツ新聞を片手に店から出て行ったんですよ。投げつける必要ある? そして何で自分は並ばなくていいと思ったの? とか色々思うことはありつつ、あまりにも腹が立ちすぎて「じじい、この野郎!!!!!」と追いかけてやろうかと思ったんですが、私が出て行っちゃうとレジに並んでいるお客さんが困るわけなんですよね。しかも一応、スポーツ新聞の料金はぴったり支払って(投げつけて)もらってるし。お客さんたちも朝からそんな光景を見せられて、ただでさえドン引きしてるし……。

©iStock.com

 そういった事情でしぶしぶ泣き寝入りするしかなかったんですが、あのときは一体どうするのが正解だったんでしょうか。今思い返しても理不尽な話です。

「横入り銭投げじじい」は「並びたくない」という明確な意図(目的)があるのでまだ相手の心理が分からなくもないんですが、どうしても理解ができないのは「意味もなく長時間粘着してくる客」なんです。

「お守りを渡してもらっていない!」とゴネる男性

 私は兵庫県のとある神社で巫女として働いていたこともあるのですが、そこで、6年ほど経った今でも忘れられない衝撃的な事件が起こりました。人もまばらな平日の昼下がり、「姉ちゃんよぉ! さっき俺お守り買ったのによぉ、お金だけ払ってお守り渡してくれてねぇじゃねぇか!」という電動車イスに乗った70歳前後の男性の声が響き渡りました。その日は暇で参拝客もあまりいなかったこともあり、私は先ほど訪れたその男性のことをよく覚えていました。

©iStock.com

 10分ほど前、「これちょうだい」と言って交通安全のお守りを持ってきたその男性から代金をいただき、紙の袋にお守りを入れようとしたところ「いや、袋いらない。このままでいいから」と言い、彼はお守りをカバンにそのまま突っ込んで去って行ったのです。

 それなのに「お守りを渡してもらっていない!」とゴネる男性に「先ほど対応させていただいた者ですが、お守りをおカバンにお入れしておりませんでしたか?」と尋ねると、「そんなもん知らん! とにかく交通安全のお守りを渡せ!!」の一点張りで、カバンの中身を確認してくれない。一体これはどうしたものかと思っていると、後ろから「どうしたの?」という男性の声が聞こえました。当時30歳そこそこだった、神社で一番の若手の神主が現れたのです。突然の救世主の登場に「ようやく助かる」と安堵した私は、事情を一通り神主に話し、通常の業務に戻るために一旦その場を離れることが許されました。