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アルコールと脂っこい食べ物で十二指腸乳頭部が詰まる

 十二指腸乳頭部が詰まる原因は大きく二つある。一つは冒頭で挙げた「アルコールと脂っこい食べ物」だ。

糸井隆夫医師

「アルコールと脂っぽい食べ物を消化するためには、より多くの膵液が必要なので、膵臓では大量の膵液を分泌します。しかし、出口(十二指腸乳頭部)には限界があるので、容量を超える膵液が一気に流れ出そうとすると詰まって滞留することがある。比較的男性に多いタイプの急性膵炎です」

 もう一つの原因は「胆石」だ。胆のうや総胆管などにできた結石が総胆管の中で詰まるなどして膵液の流れを塞ぐことで起きる膵炎。こちらは女性に多いという特徴がある。

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「面白いことに、豚などは膵臓から膵液が十二指腸に流れ込む場所と総胆管の出口が10cm以上離れているので胆石性の膵炎は起こらない。ところが人間は十二指腸に出る前に主膵管と総胆管が合流するので、リスクが一つ多いのです」

治療には、絶飲絶食で膵臓の働きを止める

 急性膵炎は強い痛みを発する。特徴は心窩部(みぞおち)や左側の背中に突然起きる激痛。普通の姿勢を保つことができなくなり、膝を抱えてうずくまるような姿勢を取ることが多い。大半が救急搬送となる。

 病院に運ばれると採血をして、膵炎のマーカーとなるアミラーゼ(消化酵素)や、白血球の値を調べ、あわせてCT(設備がない場合はエコー)の結果を照合して確定診断となる。

「急性膵炎の治療は、絶飲絶食で膵臓の働きを止めることが大前提。その上でタンパク分解阻害剤などを投与して膵液の分泌を抑え、あわせて抗菌剤で感染症を予防する。ただ、その間も痛みは持続するので、痛み止めも使います。かなり強い痛みなので、必要に応じてモルヒネなどの医療用麻薬を使うこともある。軽症なら1週間、中等度になると2~3週間の入院が必要になります」

©iStock.com

 しかし、急性膵炎の治療は退院しても終わらない。後期合併症が出る危険性が残るのだ。

「治療が終わって1カ月ほどすると、膵臓の炎症を起こしていた場所に“嚢胞”というカプセル状の空間ができることがあります。中には膵液や膿が溜まっていて、人によってはこれが肥大化して、隣接する胃などを圧迫することがある。そうなると食べたものの通りが悪くなるし、嚢胞が大腸菌などに感染すると、また面倒なことになる」