喫煙、感染、飲酒以外に、特定の病気が、がんの原因となることもある。そのうちもっとも身近で、気をつけたいのが「糖尿病」だ。万病のもととも言えるこの病気に、どんなリスクが潜んでいるのか。

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がんリスクの代表「糖尿病」

 特定の病気が、がんのリスクとなることもある。その代表が「糖尿病」だ。

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 糖尿病はとても身近な病気だ。平成26年度の厚労省の調査によると、全国の糖尿病患者は推計316万6000人で、有病率(糖尿病が強く疑われる人)は、成人男性が15.5%、成人女性が9.8%にも上る。70歳以上では男性の4人に一人(22.3%)、女性の6人に一人(17.0%)が糖尿病だという(平成26年度「患者調査」および「国民健康・栄養調査」より)。

 糖尿病と言えば、眼(糖尿病網膜症)、腎臓(糖尿病腎症)、神経(糖尿病神経障害)の三大合併症がよく知られている。また、心筋梗塞、脳卒中、認知症のリスクも高くなる。まさに「万病のもと」と言える病気なのだが、実は近年、がんにもなりやすいことがわかってきた。

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 2013年に、日本糖尿病学会と日本癌学会でつくる「糖尿病と癌に関する合同委員会」が、国内の複数の研究データを分析して、報告書を公表した。それによると糖尿病は「全がん」「大腸がん」「肝がん」「膵がん」のリスク増加と関連していた。

 具体的には、国内8つのコホート研究を統合して、男性約15万5000人、女性約18万人を10年間追跡したデータを解析した結果、糖尿病は「全がん」のリスクを1.2倍押し上げていた。がん種別には、「大腸がん(結腸がん)」が1.4倍、「肝がん」が1.97倍、「膵がん」が1.85倍という結果だった。また、統計学的に有意ではなかったが、「子宮内膜がん」(1.84倍)、「膀胱がん」(1.28倍)のリスク上昇とも関連する可能性が示された。