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他にもがんのリスクを高める病気が

 他にもがんのリスクを高める病気がある。たとえば「脂肪肝」だ。肝臓の病気と言えば肝炎以外に、アルコールの飲みすぎを真っ先に思い浮かべる人が多いのではないだろうか。たしかに、アルコールの多飲は脂肪肝の原因となり、肝硬変、肝がんを引き起こす。しかし近年、アルコールを原因としない「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」が増加しており、これも肝硬変、肝がんの原因になると指摘されている。健康診断などで「脂肪肝」と診断された人は、アルコールを飲んでいない人でも、食生活に注意をしたほうがいい。

 消化器系の病気では、「慢性膵炎」が膵がんの原因となることも知られている。慢性膵炎の原因は、多くがアルコールの多飲だ。膵がんは早期発見が難しい病気で、症状が出たときには進行して、治療が難しいことが多い。膵がん予防のためにも、アルコールは控えめが大切なのだ。

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 さらに、安倍晋三首相の持病で知られる「潰瘍性大腸炎」も、大腸がんリスクを高めることが知られている。この病気は、罹患期間が長いほど大腸がんの発症率が高くなり、診療ガイドラインによると、診断から10年で2%、20年で8%、30年で18%に大腸がん合併が認められるという。幸いなことに、大腸の炎症を抑える効果の高い薬が開発されており、治療を受ければ大腸がんのリスクも下がるとされている。激しい下痢の症状が続く人は、ぜひ専門医を受診して治療を受けてほしい。

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 こうした病気以外にも、特定の物質ががんと関係する場合がある。たとえばよく知られているのが、かつて保温断熱の目的で使われていたアスベスト(石綿)だ。現在は使用が禁止されているが、大量に吸い込むと胸の膜のがんである「悪性中皮腫」のリスクが高まるので、建築業や解体業の人は特に注意が必要だ。また近年、印刷に従事している人で、胆管がんを発症する人が多いことがニュースとなった。これは、作業の洗浄剤として使われる有機溶剤「1、2-ジクロロプロパン」が発症につながった可能性が高いとされている。

 糖尿病、脂肪肝、慢性膵炎は、生活改善によってそれ自体を予防することができる。また、高い発がんリスクがわかっている物質には、できるだけ曝露されないよう十分注意をしてほしい。