文春オンライン

2019/01/12

「慢性化すれば膵がんのリスクが飛躍的に高まります」

 感染症がなければ経過観察の場合もあるが、感染が認められる場合は緊急性の高い治療が必要になる。嚢胞に溜った液体を排出する治療だ。

「口から内視鏡(胃カメラ)を胃まで挿入し、そこから胃壁に穴をあけて、隣接する膵臓までトンネルを作って嚢胞の中の液体を排出します。従来は細い管を使っていたので、粘性の高い液体を出すのが難しかったのですが、近年は口径の大きなステント(金網)を使って排出口を作る技術が確立され、ドロドロの膿でも出しやすくなりました」

 少し前までお腹を切開して直接膵臓にメスを入れて嚢胞内の液体を排出していた治療が、おなかにキズを付けることなく、胃カメラで、安全にできるようになったわけだから、医学の進歩には感謝するばかりだ。

 しかし、糸井医師は言う。

「どんなに医学が進歩しても、100%治せるというわけではない。急性膵炎も慢性化すれば膵がんのリスクが飛躍的に高まります。ご存知の通り膵がんは、あらゆるがんの中で最も予後の悪いがんです。積極的に予防に取り組むべきです」

 見つかった時には手の施しようがないことが多い膵がん。アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏や、プロ野球楽天イーグルスなどの監督を務めた星野仙一氏などを鬼籍に送った恐ろしい病気だ。

「闘将」と呼ばれた星野仙一氏 ©文藝春秋

「もう一つ原因がストレスです」

 糸井医師によると、慢性膵炎の人が膵がんになる確率は、そうでない人と比べて4~10倍という高率だという。

「アルコールや脂肪分の高い食事に加えて、もう一つ急性膵炎の原因として挙げられるのがストレスです。急性膵炎とストレスの因果関係ははっきり解明できていないものの、膵臓を専門に診る臨床医なら、経験的にこの関係は知っているはず。その意味でも、膵臓の病気は、膵臓の専門医に診てもらうべき。単に“消化器科”というくくりで考えるのは現実的ではない」

©iStock.com

 実は日本では、膵臓疾患に特化した医師は決して多くない。しかし、日本膵臓学会のホームページを見れば、認定指導医の一覧を見ることができる。自分や家族に膵炎が疑われるとき、あるいは膵炎と診断された時、まずはそのことを思い出してほしい。そして、指導医への紹介を医師に依頼してほしい。

 2011年の調査では、年間約63,000人が急性膵炎になっており、現在はその数がさらに増加しているとみられる。急性膵炎は決して他人事ではなく、意外に身近な重大疾患だということを、ぜひ覚えておいてください。

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