例えば、2015年には国内のウナギ養殖場に18.3トンのシラスウナギが入った。このうち9.6トンは密漁・密売されたもので、別の3.0トンには密輸が関わっている可能性が強く疑われている。合計すると、2015年に日本のウナギ養殖場に入ったシラスウナギのうち、68.9%に違法行為が関わっていたと推測される。
違法なウナギと適法なウナギは、流通と飼育の過程で混じり合い、業者でも区別がつかなくなる。老舗の蒲焼き店でも、チェーンの牛丼店でも、高級デパートでも、生協の宅配でも、同じように高い確率で違法なウナギと出会うことになる。
シラスウナギの採捕と流通に関わる違法行為は、適切な消費上限量を設定するための情報収集を妨げ、ウナギの持続的利用を困難にしている。
消費速度の低減と合わせて、再生産速度を増大させることも重要である。台湾と香港の研究チームは、1970年から2010年にかけて、ニホンウナギの有効な成育場のうち、76.8%が失われたと推測している。再生産速度の増大には、ウナギが成長期を過ごす、河川や沿岸域の環境を回復させることが効果的だ。
環境省が行った調査でも明らかにされているように、環境回復で最も重要度が高い対策は、堰やダムによる遡上の阻害を解消することである。不要な堰やダムを撤去するか、不可能な場合は魚道を設置するなどして、上流域の生息域を開放する必要がある。
その一方で、日本では「ウナギに住み場所を提供する」と称して「石倉カゴ」と呼ばれる漁具を河川内に設置する取り組みが目立っている。石倉カゴはあくまで漁具であり、その設置によってウナギが増えるとする科学的な知見は一切ない。予算や時間といったリソースは有限であり、科学的な裏付けのある対策に対して配分すべきだ。