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塾の授業料、年間126万円は妥当か? 教育のプロ2人が中学受験のコスパを考える

『二月の勝者』高瀬志帆さん✕教育ジャーナリスト・おおたとしまささん対談

note

「体育が苦手だから中学受験」という選択肢

おおた 都立でトップ校を目指すのであればほぼオール5は必須ですが、テストの点数がそのまま反映されるのかというと、そういうことでもないんですよね。

高瀬 しかも、副教科の点数が倍で計算されますよね。美術、音楽、技術家庭、体育が5段階評価の2倍で10に、主要教科が5に。

おおた 東京都では、バランス型のオールマイティな優等生を評価したいという制度に、数年前に変わったんですよね。

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高瀬 お子さんが体育が苦手で中学受験させたケースも取材して、そういった理由で中学受験を選ぶ家庭もあるんだな、と思いました。

「男子校こそ、異性の目を気にせず好きなことを」

『二月の勝者-絶対合格の教室-』より (c)高瀬志帆/小学館 ビッグコミックスピリッツ連載中

おおた 「男子校こそ、異性の目を気にせず好きなことを、中学から思いっきりやることができます」、これも黒木の発言ですね。とっても共感しました。僕も男子校なんです。

高瀬 このコマは、取材で出会った、女子校に進学したらオタク街道まっしぐらになった女の子のことを思い浮かべて描きました(笑)。小学生の頃はオシャレだとか、リア充っぽい趣味もある様子だったのが、中学に進学するとアニメ一直線に。

 よくよく聞いてみると、小学生の頃はイケてる女子のマウンティングみたいなものがあって、なかなか好きなアニメに没頭できなかったようです。女子校に進学することでかえって自分の趣味・嗜好をのびのび楽しめるのであれば、いいですよね。

「世の中には男と女がいるんだから」共学派の理屈は正しい?

おおた 共学を推す人たちの理屈としては、「世の中には男と女がいるんだから、学校はその縮図でなければならない」というのがあります。でも、学校が社会の縮図になってしまったら、社会の悪いところもそのまま反映してしまうと思うんですよね。

 たとえば、男の子は数学が得意だよね、とか、家庭科ではやっぱり女の子ががんばるべきだよね、とか、世の中にまだまだある刷り込みもそのままコピーされてしまう。一方、男子校、女子校というのは、学校の中においては性差が存在しない。そういったメリットは大きいと思います。

高瀬 わたしは中高は共学しか経験したことがなくて、最近まで女子校のイメージに偏りがありましたが、取材に伺った学校で、文化祭の準備でのこぎりを持って歩いている女の子を見て「なるほど、女子がすべてをやらなきゃいけないとはこういうことか」、と。周囲の女子校出身の友人の話を聞いていても、コピー機のトナー交換も、他の人に頼まずに自分で手を真っ黒にしてやっちゃうなど、自立心のある性格の人が多いように思います。