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塾の授業料、年間126万円は妥当か? 教育のプロ2人が中学受験のコスパを考える

『二月の勝者』高瀬志帆さん✕教育ジャーナリスト・おおたとしまささん対談

おおた 女子校に限定して言えば、いま偏差値の二極化が進んでいます。中堅校が軒並み共学化して、上位校は偏差値がどんどん上がっていき、一部の学校は毎年偏差値表で下がっちゃっている。

 ただ、これは悪いことばかりではなくて、偏差値が下がっても学校が持っている大学の指定校推薦枠ってそんなに減らないんです。だから、平均的な学力の子が受かるような女子校でも、ミッション系であれば上智や立教への推薦枠があったりする。一見偏差値が高くなくても、実は意外に進学実績がいい学校も多いですしね。

中学受験の「偏差値50」は実はすごい

『二月の勝者-絶対合格の教室-』より (c)高瀬志帆/小学館 ビッグコミックスピリッツ連載中

おおた その流れで言うと、とっても印象に残ったのはこのコマ。中学受験における偏差値が、大学受験や高校受験のそれとは違うことを解説する場面です。中学受験の偏差値を勘違いしている大人が多すぎる!

高瀬 マンガでも登場人物に言わせていますが、塾の先生とお話してると「偏差値50って、なかなかいかないですよ」ってみなさんおっしゃるんです。大人の感覚だと偏差値50って平均だけど、中学受験においては、その学年の全生徒ではなく、あくまで中学受験に向けて勉強をしている子どもたちの中での平均ですから。

「こんなにがんばったのに結局受かった学校が偏差値50だなんて、恥ずかしくて」というようなことをおっしゃる親御さんにも会うんですけど、子どもが土日も含めて毎日塾に行って、3年間勉強した結果に対して「恥ずかしくて」って、そんな話はないだろう、と。

おおた まったく同じ意見です。「超難関校に合格することだけが中学受験の目的ではない」ということは、これまでの著書でも繰り返し書いてきたことですし、近著の『中学受験「必笑法」』のテーマでもあります。

 でも、こういう話って聞く耳持たない人は持たない。「御三家じゃないと意味がない」とか「早慶付属校じゃないと意味がない」って子どもに言ってしまう人って、自分の人生でもブランドにこだわってきたんだろうな、と。あなたはその生き方で楽しいかもしれないけど、子どもに押し付けるのはどうなのかな、ってところはいつも引っかかります。

中学受験のボリュームゾーンを描きたかった

おおた 『二月の勝者』でも、いわゆるトップ校を狙う子たちばかりが通うようなSAPIXのような塾ではなく、系列店が少ないような、こぢんまりとした塾を舞台にしてますよね。

高瀬 中学受験のボリュームゾーンを描きたかったから、あえてこういった設定にしました。個人的には、トップ校に受かるかどうかとは別に、小学生が長時間、学校以外のところで勉強できるだけでも適性があると思うんですよね。みんながみんなできるわけではないと思う。おおたさんも、ご著書でそういったことを書いていますね。

おおた 中学受験で結果があまり良くなくても、決して悲観するようなことじゃないんですよね。以前、都内の偏差値50前後の私立中学校と、都立二番手校と言われるような学校の進学実績を比べてみましたが、総じて進学実績は私立中学のほうがよかった。

 だから、将来子どもを大学に通わせたいと考えている都内在住者で、中学受験で偏差値50の学校に入れるのなら、都立上位校に入れる以上の価値があるんです。