著書『宝島』(講談社)で第160回直木賞を受賞した真藤順丈さん。東京出身の真藤さんにとって、戦後の沖縄は、方言や歴史の考証だけではなく、「生半可な態度では臨めない」という決意を要するテーマだった。ところが、想像以上のプレッシャーから途中で2年間くらい執筆を中断する時期もあったという。(前編はこちら)
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――戦後の沖縄を描く重みをなかなか背負いきれず、執筆も滞り……そんな苦しい時期があったとおっしゃっていましたが、どう乗り越えたんですか。
真藤 やっぱり、『宝島』を完成させなければ俺は前に進めないんだなという気持ちがありました。沖縄のこの時代の話を全身全霊で書き切れば、何かどこかに届くんじゃないかというのは思いました。
それから編集者の力添えは大きかった。初稿から「このキャラクターが」「この場面が」とあちこち指摘されて、1年ほどかけてリライトを繰り返したんです。結局、第6稿まで直しました。今回はこれまでの作品のなかでもとりわけ、編集者たちと一緒に生みだしたという実感が強いですね。苦労したパートをあっさり切り捨てられたり、歯に衣着せぬ指摘を浴びつづけたりしたので、それこそ今は、愛憎相半ばするものがありますが(笑)。
――受賞の知らせは、編集者の方もめちゃくちゃ嬉しかったでしょうね。
真藤 うるうる来てましたね(笑)。