おととしの秋、まだブレイク前の大坂なおみにインタビューしたときのことだ。就職面接みたいな質問を繰り出してしまった。
――なおみ、あなたの欠点はなんですか?
すると、「うーん」と考えながら、話し出した。
「私の欠点は、自分のミスを許せないことだと思う。せっかく勝っているのに、単純なミスをしてしまうと自分が許せなくて、悲しくなっちゃう。試合後、映像で確認すると、顔だけ見たら負けている選手かと思ってしまうほど。だから、コーチからは『なおみ、いつだってポジティブでいこう』って、いつもお説教されてるの(笑)」
たしかに、おととしの大坂なおみはプレーしていても、ネガティブな、ツラそうな顔をしていることが多かった。
それが去年の全米オープンの前からポジティブなオーラが彼女の周りに漂うようになった。
ネガとポジが入れ替わったのだ。
目の前のことに「フォーカス」出来るように
去年の秋、「この1年で、ミスした後の表情がずいぶんと変わりましたね」と話すと、微笑を浮かべながら自身の変化について話してくれた。
「ミスをした後に気持ちを切り替えるというよりも、目の前のことに『フォーカス』出来るようになったんだと思う」
全米オープンの決勝では、憧れの選手であるセリーナ・ウィリアムズと主審がモメはじめ、場内が異様な雰囲気になっているにもかかわらず、それで感情は揺らがなかった。
「フォーカスしようとか、自分に言い聞かせるんじゃなくて、自然と目の前のことに集中できたのが良かったんだと思う」
全豪オープンの決勝でも、集中できるかどうか、試される時間帯があった。
第2セット第9ゲーム、トリプルのマッチポイントを握りながら、そこから相手のクビトバが素晴らしい粘りを見せ、キープ。
「あと1ポイント」を逃してしまった大坂は、第12ゲームで自分のサービスゲームをラブゲームで失い、第2セットを奪われてしまう。
メンタル・ブレイクダウン。そんな言葉が浮かんだし、オフィシャルサイトの「勝利可能性」はクビトバの方に一気に傾いた。が、大坂は崩れなかった。