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期待の大砲 安田尚憲との比較

 思えば2017年、1年を通して大地以外打てる日本人選手が誰一人おらず、チームが最下位を独走する中、4番を打つことになった。その無理した後遺症みたいなのがずっと続いたシーズンのようだった。

 慣れないことはするもんじゃないとはよく言ったものだが、時にはどうしてもやらないといけないことだってある。チーム事情でシーズン中にセカンドからショートにコンバートされたり、またセカンドに行ったり、サードを守ったりした。本人の意思に沿ったものかはわからないが、そうして順応してチームの力になっていた。誰かやらなきゃいけない時に率先してやってくれるのがこの男だ。We Are!だってそうだ。どんな時でもずっと大地が先頭に立っていた。

どんな時でもずっと先頭に立っていた ©文藝春秋

 それでも、安田尚憲が昇格すると、ついに二人が比較されるようになってきた。19歳のドラフト1位パワーヒッターなんて夢と期待しかない。安田がDHで、大地がサードを守っていたが、9月24日、ついに安田を守備につかせるために大地がDHで出場することになった。

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 その試合、土肥星也が何度も四球を出し、得点圏にランナーを置く苦しいピッチングを続けていた。ピンチになれば真っ先にピッチャーに声をかけに行き味方を鼓舞する大地だが、その光景も見られない。

 ふと三塁側ダッグアウトを見てみた。大地はベンチの入り口部分に陣取り、身を乗り出してずっと叫んでいた。普段の大地の表情ではなく、鬼の形相という表現が一番しっくりきた。何を叫んでいたのかはわからない。おそらく土肥や内野陣へのエールだとは思う。でも自分が近くに行ってそれを直接伝えることができない。その歯がゆさもあったのかもしれない。結果、土肥は無失点に抑えた。笑顔で大地が土肥を迎える。全く違う顔だった。

 もうすぐ平成が終わる。大地は平成元年生まれ。30歳になる。全然老け込む年ではないし、ピークがすぎた感じもまだない。新たに選手会長になる。でも大地の周りに逆風が吹く。ポジション争いも、レアードだけじゃなく、安田だっている。レアードが外野を守るんじゃないかという話もあるが、あの守りも捨てがたい。ホームラン王に期待の若手とライバルは確実に増えた。

 それでもこの逆風でもきっとチームの戦力に、何よりチームの中心となってくれると信じている。キャリアハイの成績を残して、あと153本に迫った1000安打を何としても達成してほしい。(奇しくも153安打は2014年に残したキャリアハイ)

 仮に開幕スタメンを奪われても、またコンバートされることがあったとしても、絶対に大地の力が必要になる時が来る。ファンは大地の打席でこう歌っているのだから。

 大地 希望の空へ 風を超えて 突き進め

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