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さようなら平成――もし「平成元年人」が現代にタイムスリップしたら何を思うか

2019年の論点100

2019/03/30
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平成元年からのタイムスリップ

 こんな想像をしてみよう。平成が始まった1989年を生きる「平成元年人」が、平成の終わる現代にタイムスリップしてきたら、どんな感想を抱くだろうか。

 おそらく街並みに驚くことはないだろう。六本木ヒルズや横浜ランドマークタワーなど平成に入ってから建設された超高層ビルは多いが、すでに池袋のサンシャイン60や新宿センタービルなど高さ200メートルを超えるビルはあった。

 マクドナルドなどのファストフード、セブン-イレブンなどのコンビニもすでに繁盛している。店舗数は主要コンビニだけでも3倍以上に増えたが、「便利になったな」程度の感想だろう。

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 ファッションには違和感を抱くだろうが、度肝を抜かれるほどではないはずだ。当時は肩パッドをいれたスーツなどが一部の若者に好まれていたが、奇抜さなら現代も負けていない。少し前はノームコア(「究極の普通」という意味)といって地味なファッションが流行したこともあったが、最近のハイブランドはとにかく派手。インスタ映えするような、ロゴが前面に押し出された服などが大流行である。

バブル期の奇想天外な未来予測はどうなったか

 しかし、代わり映えのしない街にがっかりはするかも知れない。バブル期には、奇想天外な未来予測が流行していた。

 建設会社の大林組は1989年、「エアロポリス2001」という、東京湾の人工島に高さ2001メートル、500階建てのビルを建設するというプランをぶち上げていた。同じく建設会社のフジタも、地下を飛ぶ飛行機「ジオ・プレイン」構想を発表している。日本の地下に、大都市を結ぶトンネルを開通させ、飛行機を24時間飛ばす計画だ。1991年にバブルが崩壊してしまったため、このような計画は当然ながら実現していない。

「平成元年人」が、一番興味を惹かれるのはやはりスマートフォンだろう。何せ彼らはインターネットという概念さえ十分に理解していない。

©iStock.com

 1980年代にも、実験的に大学間のコンピューターをつないだネットワークはあったが、一般人には縁遠い話だった。「インターネット」という言葉が市民権を獲得するのは、ウィンドウズ95が発売された1995年のことである。しかもインターネットの個人普及率は1997年になっても9.2%に過ぎなかった。2002年にようやく5割を超え、8割を超えたのは2013のことである。

 スマートフォンが1台あれば、家にいながらにしてモノは簡単に買えるし、銀行の口座管理はもちろん、友人との割り勘もできる。さらにはキーワードを入れるだけで世界中の情報が検索できてしまう。数十年前からささやかれていた夢が、ようやく平成時代に実現したのである。