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情報にアクセスするコストが飛躍的に下がった

「平成元年人」がまず気にするのは利用料だろう。彼らは「アメリカの情報を見るのに、いくらかかるんですか」と心配するはずだ。今となっては信じられないが、1989年は電話代が非常に高額だった。距離や時間帯によっても料金は変わり、東京から鹿児島に電話するのには3分で300円以上もかかった。国際電話はさらに高く、ヨーロッパに電話をかけようと思ったら3分で1000円以上もした。それが今や、月額の固定料金だけで世界中とつながることができる。

日本初の携帯電話「ショルダーフォン」©文藝春秋

 情報にアクセスするコスト全般が信じられないほど下がったのだ。たとえば英語を勉強しようと思えばYouTubeにはたくさん教材が転がっているし、世界中の有名大学が授業をオンライン配信している。もちろん、そのほとんどは無料だ。

 同時に、一般人の情報発信も容易になった。出版社に投稿したり、レコード会社のオーディションを受けなくても、pixivやニコ生などで、気軽にマンガや音楽を発表することができる。『ヲタクに恋は難しい』、米津玄師、みやかわくんなど、ネット上で注目され、全国区になった作品やアーティストは多い。

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少子高齢化という現実

 このように「平成元年人」は、夢のように便利な平成の終わりに驚くはずだ。個人の生活に注目するなら、平成の30年間で、信じられないくらい楽しい時代になったと言える。しかし「平成元年人」がしばらく現代に滞在していると気が付くだろう。この国から子どもが減って、高齢者が驚くほど増えているということに。

©iStock.com

 平成の30年間で、日本の人口自体はそれほど変わっていない。1989年に1億2321万人だったのが、2018年に1億2642万人になったくらいだ。

 問題はその内訳である。

 平成が始まったばかりの1990年、この国の高齢化率(総人口に占める65歳以上割合)は、わずか12.1%だった。その割合は、2018年には28.1%にまで上がり、人口にして3557万人である。

 一方で15歳未満の子どもの数は減り続け、1990年に2254万人いた子どもは、1552万人にまで減った。人口に占める子どもの割合は12.3%で、世界最低水準だ。

 このような人口動態の変化を「少子高齢化」という。文字通り、子どもが減って、高齢者が増えることだ。

 日本は国土面積がそれほど大きな国ではない。だから少子化は問題ないのではないかと誤解する人がいる。しかし問題は、人口が減ることではなく、そのバランスの悪さなのだ。