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 1990年代の経済低迷に対して、日本政府は公共事業を増やすことで対応しようとして、地方に公共施設や大型道路を次々に建設した。本当はその労力の何分の一かでも、少子化対策にかけていれば、きっと現代の風景は変わっていただろう。

 もし「平成元年人」が再び1989年に戻れるならば、きちんと伝えて欲しいところだ。昭和を無理して延命させようとすると大変なことになる、と。

本当に「平成」は終わるのか?

 冒頭で平成が終わると書いた。文字通り、元号としての平成は2019年4月をもって終わるだろう。しかし平成には一つ、大きな特徴がある。それは、膨大なアーカイブが存在することだ。

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 スマホなど情報機器の普及と、インターネットの発達で、平成の間に、とにかく何もかもを記録する文化が生まれた。昭和時代にもアナログのカメラくらいはあったが、記録される情報量はまるで比べものにならない。日常を切り取った写真や動画はもちろん、ツイッターやフェイスブックに記録される文字、グーグルタイムラインによる行動履歴など、膨大な情報がインターネット上にはアーカイブとして蓄積されている。

 つまり、次の時代になっても「平成」を振り返ることは非常に容易い。平成に生まれた音楽や映画は、いくらでもアップルミュージックや、ネットフリックスで楽しむことができる。テレビ局に死蔵されているアーカイブも、次第にネットで購入できるようになっていくだろうから、アクセスできる「平成」は、むしろ増えていくという事態も予測できる。

 その意味で、永遠に「平成」を生きていくことも可能なのだろう。平成の音楽を聴き、平成の服を着て、平成の思考に染まったまま生きるのも悪くない。時代をアーカイブの総体と考えるならば、「平成」は決して終わることがないのだ。

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