「どんなに激しいプレーをしても、表情が崩れない。ただイケメンなだけではなく、そんな端正な表情でプレーできる選手は久しぶりかもしれない」
歴代の日本代表の試合を写真に収めてきたフォトグラファーたちがそうたたえるのが、南野拓実である。アジアカップ2019の準々決勝でベトナムと対戦したあと、熱狂的なサッカーファンの多いベトナムでは南野を容姿をたたえるファンが急増したという。
もちろん、彼の魅力は容姿にあるわけではない。ただ、人の内面が表情に出ると考えれば、その力強くも洗練された姿は彼のサッカーにかける想いが表れたものなのかもしれない。
少しの運を手繰り寄せた南野の儀式
1月28日、イランとの試合のおよそ80分近く前。日本代表を乗せたバスがスタジアムに到着したが、ウォーミングアップまでまだ時間はある。
吉田麻也、堂安律、南野の3人がグラウンドに出てきた。彼らがセンターサークル付近で、会場の雰囲気を味わう姿はもはや恒例となりつつある。しばらくして、3人の輪がとけた。
吉田も堂安もロッカールームへ戻っていったが、南野だけは違う方向へ進む。南野が向かった先は、この試合で日本が後半に攻めることになる、メインスタンドから見て右側のゴールだった。
後になって思えば、あの行動は少しの運を手繰り寄せるために必要な儀式だったのかもしれない。
アジア勢との対戦では39試合負けなしで、4年前のアジアカップ以降の公式戦での敗戦はロシアW杯スペイン戦での1敗のみ。FIFAランキングでもアジア最高位の29位(日本はアジア3番目の50位)につけるのがイラン代表だった。アジアカップでは最初の5試合を戦って、12得点で、失点はゼロ。そんなアジア最強チームと対戦した日本は3-0の快勝を飾ったが、その原動力となったのが南野だ。