このように、女性向けの広告で先進的なメッセージを発信してきた西武ですが、西武・そごうグループの2019年元旦広告を目にしたときは驚いてしまいました。女優の安藤サクラさんの顔にパイがぶつけられ、「女の時代、なんていらない?」というキャッチフレーズの、あの広告です。
キャッチフレーズを読み認識する時間ってどのくらいでしょう? 1分もかからないでしょう。1行なら3秒ぐらいでは?
一瞬で認識してしまうキャッチフレーズを、ここではあえて1つ1つ確認していきましょう。
「中心に、男も女もない」には賛成だが……
まずは、「女の時代、なんていらない?」というキャッチフレーズ。
「?」がありますから、問いかけ。いるかもね、というニュアンスもある。しかし、動画では安藤サクラさんが「いらない!」と言い切っています。
「女であることの生きづらさが報道され、そのたびに、『女の時代』は遠ざかる」とありますが、女であることの生きづらさが報道されてきたからこそ、先輩たちの努力や発言でやっと今日があるのに、です。
女性の選挙権が認められたのはサクラさんの、おばあさんの時代。お母さんの時代は大企業の就職試験すら受けられなかった。1985年に雇用機会均等法、つい最近の2015年には女性活躍推進法。なぜこんな法律ができるのでしょう? 女性が1歩進めば1つ壁が立ちはだかる。家庭との両立、保育所不足、非正規雇用などなど障壁が次々に……。
堤さんの「どのくらい」に答えるとしたら、“法律の後押しでやっとここまで、あれから40年もかかってまだまだ”と。
そして、「今年はいよいよ、時代が変わる」と明言。平成が終わるから? 何が変わるのかな。
「本当ですか」とは「ウソでしょ」という疑念もあるということですね。ますますコンセプトが分からない。
「中心に、男も女もない」とダイバーシティは私も賛成ですが。
ウィットがあればコンセプトもはっきりしたのに
パイ皿が飛び交う動画のほうも見てみました。
野球の優勝チームがビールやシャンパンを浴びせ騒ぐのは“もったいない“とは思いますが不愉快にはなりません。格闘技などでピザとか何かを投げつけても、それを相手は平然と食べて見せる。こういうウイットがあったらいいのになあーと思います。
顔が商品の女優さんに皿をぶつけるなんてよくOKしたものと、オファーしたほうの勇気にも、受けるほうの勇気にも感心しますが、傷がつかなくてよかった。訴訟ものです。動画ではパイ皿がたくさん飛んでいます。サクラさんにその一皿をキャッチさせてペロリ、にっこり嘗めさせればよかったのに。あるいは空中で投げ返す。そうすればコンセプトははっきりする。
皿を投げているのが一体誰なのかもよくわかりません。男性、あるいは女の時代擁護派の女性? 又はもてはやされている女性?