ユニークな文庫フェアをやっていると聞いて、新宿と中野の間、中井駅前の商店街の本屋さん、伊野尾書店を訪ねた。
西武新宿線中井駅と都営地下鉄大江戸線中井駅を結ぶ駅前商店街には、蕎麦屋さん、ファーストフード店、中華料理店、歯医者さんと、本屋さんが並ぶ。取材日は、おりしも台風が襲来し、店頭の棚はビニールカバーでガードし、シャッターを少し下げて雨風が吹き込むのを防いでいる状態だったが、いつもは、午前中は近所のお年寄りや赤ちゃんを連れたお母さん、午後には近くにある学校帰りの生徒たち、夕方からは乗り替えや帰宅の会社員たちと、賑わう町の本屋さんだ。
いっぽう、ユニークなイベントや店づくりでも本屋好きの間で知られている。
最近でこそ、様々なイベントで集客する書店が多くなってきたが、2008年におこなった本屋プロレスは、プロレスファンの間でも、本屋好きの間でも語り継がれている。プロレス団体の社長の著書の出版記念イベントとして、店頭でプロレスができないかと発案し、縁があってプロレスファンの伊野尾宏之店長のところに相談があったとのこと。けっして大きな店舗ではない。店頭の棚を少しよけて、スペースを作り、レフェリーとリングアナ、本屋さんのエプロンを着たプロレスラー2人が戦い、200人の観客を集め、本を売った(参照:伊野尾書店ブログ)。
フェアもユニークだ。取材日は、「中井文庫」というオリジナルな文庫フェアをやっていた。文庫の帯の推薦文と言えば、作家や文化人、タレントでも本好きとして知られる人が多いのだが、伊野尾店長は、それじゃあ面白くない、本を勧める人として普段あまり出てこない人に推薦してもらおうと人選した。地元中井の商店街の歯医者さん、蕎麦屋の店主、信用金庫の職員から、プロレスラーやバーテンダーもいる。もちろん、店長をはじめ伊野尾書店のスタッフや、作家、編集者も含めて、結果的に非常にバラエティに富んだ推薦者が揃った。10月いっぱいやっているので、実際にどんな人がどんな本を勧めているのかは店頭でチェックしてほしい。