面白いことに手間を惜しまない
商店街の本屋さんなので、バランスはいい。地元のお客様や通勤客が買っていくためのベストセラーや話題書、月刊誌や実用書はひと通り揃えている。ただ、それだけではつまらない、手間をかけて、店長やスタッフのオススメを並べ、推薦コメントを添える。ちょっと切り口の違うフェアを仕掛ける。「泣ける本フェア」はある程度の売上げが見込めるが、そればかりだと店頭に変化が出ないので、「笑える本フェア」をやったり、他店の書店員さんと一緒にホラー本を仕掛けたり、中には、「人が何か(地球外生命体とか謎の植物とか)に食べられる本フェア」というのもあったとか。
「人が何かに食べられる本フェア」は、ネットで話題になったりするが、もちろん、「泣ける本フェア」ほどは売れない。それでも、何か面白いことをやっている本屋さん、目新しい本をオススメしてくる本屋さんとして、ついつい寄ってしまうかもしれない。
それぞれの棚に、ちょっとしたコメント、面白い選書、手に取ってしまう仕掛けが潜んでいる。ちょっとマニアなフェアや、店長やスタッフのオススメコーナーは、大量に仕入れて大量に売れるものではないけれど、ていねいに手間をかけて、その中からぽつぽつと地味に売れていく。そうやって仕掛けていかないと地盤沈下していく不安があり、コミックでも実用書でも、児童書でも手間をかけているのだという。
店長のオススメコーナーに「小さい店だからできること」というPOPがあった。小さい店だから、これもできないあれもできないと縛ってしまうことはない。プロレスだってできたのだから、最初からできないと決まっていることなんかない。小さい店だからできることを、ひとつひとつやっていく、そんな宣言にも見えた。