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医師に聞く、インフルエンザ対策の「うがい」「マスク」不要説は本当か

テレビの視聴率は良くてもワクチン接種率は低い

2019/02/09
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マスクの正しい装着方法とは?

 同様に、最近になって予防効果を疑問視する指摘が出たのが「マスク」だ。

 マスクの網目はインフルエンザウイルスより直径が大きいので、ウイルスは苦も無く通過してしまう――という話だ。

「たしかにインフルエンザのウイルスはマスクの網目よりも小さいので、その意味での予防効果は低いのかもしれません。ただ、すでに感染している人が咳やくしゃみをしたときに、ウイルスをばら撒くことは避けられます。咳やくしゃみで放出されるウイルスは水分にくるまれているので、マスクの外にはほとんど出ません。感染拡大を防ぐ意味では重要です」

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©iStock.com

 しかも、大谷医師はもう一つ、マスクの大きな効用を唱える。「接触感染予防効果」だ。

「人は無意識のうちに顔を触ります。ウイルスのついた指先で鼻や口、目などを擦ることで感染します。しかし、マスクをきちんと装着していれば、少なくとも鼻と口を触る機会は激減します。そう考えると、マスクはしないよりもしたほうがメリットは大きいと言えるでしょう」

 そう語る大谷医師は、マスクを正しく装着していない人の多さに危機感を覚えるという。

「いまだにマスクから鼻を出している人がいますが、あれは論外。じつはある調査で、マスク着用者の17%が2日以上にわたって同じマスクを連用しているという結果が出たのです。それだけでなく、一つのマスクを着脱する回数は平均8回という残念な結果が出ています」

 マスクの表面にはウイルスや雑菌が付いている。マスクをずらす時、大半の人がそのウイルスの巣窟のような部分を指でつまんでいるのだ。

「基本的にマスクは使い捨て。少なくともマスクの表面を触るのだけはやめてほしい。女性や子供はマスクが大きいと頬に大きな隙間ができてしまうので、サイズの小さなマスクを使うなどして、ジャストフィットを心がけて下さい」(大谷医師)

アメリカでは「マイペン」が奨励されている

 マスクの表面だけでなく、ウイルスはあらゆるところに存在する。

 特にざらざらしたところより、つるつるしたところで活性化する。

「1982年に行われた実験で、布や紙など表面がざらざらしたところでのウイルス生存期間は8時間ほどだったのに対して、プラスチックやステンレスのような平滑表面では24~48時間も生きていたのです」

 大谷医師によるとアメリカでは、こうしたことを背景に「マイペン」が奨励されているという。

 銀行など公共の場に置かれたペンは使わず、友人や同僚ともペンの共有はせず、自分専用のペンのみを使うことで感染予防に取り組もうということだ。

 脅すつもりはないけれど、読者の皆さんにも「マイペン」をお勧めします。