過去最大級の猛威をふるっているインフルエンザ。
2月上旬がピークと見られているが、これまでの主流だったA型に変わって、今度はB型インフルエンザウイルスの流行期を迎える。まだまだ油断はできない。
実質的なワクチン接種率は30%
それにしても、毎年どうしてこうもインフルエンザが流行るのか。
池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師が明快に答えてくれた。
「ワクチンの接種率が低いからです」
平成元年に796万本だったインフルエンザワクチンの製造量は、平成6年に30万本まで落ち込むが、その後増加に転じた。今年度はおよそ2720万本の製造が見込まれている。
しかし、日本の人口は約1億2600万人。しかも小児は2回接種する。そう考えると、大人の接種実績はかなり少ないことになる。
「小児の大半と高齢者の多くはワクチンを打っていますが、その間の世代、つまり20代から60歳あたりまでの接種率が非常に少ないのです。正確な数字はありませんが、私の計算では多く見積もっても日本人のインフルエンザワクチン接種率は30%に満たないと思われます」(大谷医師)
ワクチンを打っても感染する時は感染する。とはいえ、打っておけば重症化を防ぐことはできる。小児に多い「脳症」や、高齢者に多い「肺炎」など、命に関わる合併症を防ぐ意味でも、ワクチンを接種することの重要性は高い。
この時期、テレビのワイドショーでは軒並みインフルエンザの話題を取り上げている。この病気に対する視聴者の興味は大きいようだ。なのに、ワクチン接種率は30%――。日本人のインフルエンザ予防への本気度がわからない。
せめて今年の秋はワクチンを接種した上でシーズンインしてほしいものだが、その前に、現状での対策を今一度考えておきたい。
「うがいは効果がない」は本当か
「1回飲むだけでOK」という新薬が出たと思えば、すぐに耐性ウイルスが見つかるなど、一進一退の攻防が続いているインフルエンザ対策。従来の考え方を覆す新しい説も登場している。
最近、「うがいはインフルエンザ予防に効果がないらしい」という話題を耳にした人は多いだろう。
これについて大谷医師は「やっておいて損はない」という。
「たしかにインフルエンザに対しての効果は薄いのかもしれませんが、のどの湿度を保つことはかぜ予防に役立ちます。また、殺菌効果で知られるカテキンを成分とするお茶でうがいをすれば、インフルエンザ予防にも何らかの効果が期待できると私は考えています」
ただ、インフルエンザウイルスは短時間で組織にもぐり込んでしまうので、それを防ぐには頻繁にうがいをする必要が出てくる。
そこで大谷医師は、小まめにお茶を飲むことを奨励する。
「のどのウイルスがお茶を飲むことで胃に流されたとしても、胃酸が殺してくれます」
そう語る大谷医師は、毎日の外来で、患者を一人診るたびにペットボトルのお茶を一口飲んでいるという。