ニッポンのタブロイド紙と言えば「日刊ゲンダイ」と「夕刊フジ」。その過激でわかりやすい論調は会社帰りのお父さんの憂さをいっときのあいだ晴らす。

 派手な色使いと見出しには政治ビラや立て看板のような迫力を常々感じていたのだが、「通勤電車の窓ガラスに映ることで隣の人にも伝わればいいと思ってつくってます」と実際にタブロイド紙のエラい方に聞いたときは唸った。やっぱりあれは「檄文」なのである。

 特徴のひとつを言えば、「安倍批判」が日刊ゲンダイで「安倍応援」が夕刊フジだろう。タブロイド紙を買うお父さんは自分の好きな論調のほうを選べばいい。ちなみに私は両紙とも読んでその違いを楽しむのが好きだ。

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安倍晋三氏 ©getty

「安倍神宣言」のゲンダイと「韓国」の夕刊フジ

 たとえば今年のゲンダイの一面を振り返ってみると、「安倍白旗」「安倍GDPも偽装発覚」「安倍神宣言」など、やはり首相に関する一面が多い。ちなみに「安倍神宣言」とは例の森羅万象発言のことである。

 では夕刊フジはどうか? 実は昨年末から同じテーマの一面が続いていたのだ。それは、

「韓国」である。

 あの「レーダー照射」以降、ずーっと韓国に関する記事が一面だったのである。

 まず12月22日(※紙面は翌日付。以下同)の「レーダー“攻撃” 官邸激怒 韓国を敵国認定必至」からはじまって、

「レーダー照射韓国逆ギレ自滅」(12月25日)

「韓国レーダー照射決定的証拠」(12月26日)

「レーダー照射米軍韓国に警告」(12月27日)

「日米 韓国金融制裁」(12月28日)

 発行日は連日韓国一面。お正月を挟み、

「レーダー逆ギレ韓国孤立」(1月4日)

「ビデオ反論 韓国墓穴」(1月5日)

「レーダー激怒 米韓同盟解消も」(1月7日)

「レーダー照射 立民知らんぷり」(1月8日)

 と年末年始レーダー一色。

 だんだん「逆ギレ」して「激怒」してるのが夕刊フジに見えてくる。私はタブロイド紙は「毎日真剣に怒ってるおじさん」と擬人化しているが、その真骨頂かも。

©iStock.com

 その後も「虚言韓国にトドメ」(1月9日)、「日韓断絶」(1月11日)、「韓国制裁 官邸決断」(1月18日)、「韓国乱心」(1月22日)、「韓国恥さらし」(1月24日)とボルテージは上がる。一面や駅売りの広告に韓国ネタが毎日続く。