アマゾン、メルカリに対抗する「攻めの投資」
2月12日、沖縄から戻った三木谷会長は二子玉川の楽天本社で2018年12月期の通期決算発表に臨み、「楽天はまだ成長する」と気勢を上げた。1兆円を超えた売上高だけでなく、営業利益も前年比14・1%増の1704億円で過去最高を更新した。
アマゾン・ドット・コムやヤフー・ショッピング、メルカリ、ZOZOタウンなどに対抗して投資を先行させている国内EC(ネットショッピング)事業は減益だが、「楽天カード」に代表されるフィンテック(ネット金融)事業がそれをカバーしている。
売上高1兆1000億円のうち、4268億円は国内EC事業が占める。これまで独走状態が続いたが、今はライバルから頭ひとつ抜けだすための「攻めの投資」を続けており、営業利益は18%減の613億円になった。売上高は9・2%増えているものの、それを上回る投資をしたことになる。
重点的に投資をしているのは、三木谷会長が「最後の難関」と呼ぶ物流部門である。1月に千葉県流山市と大阪府枚方市に巨大な物流拠点がオープンし、自社で配送できるエリアの人口カバー率は2%から19%に跳ね上がった。「翌日配送」のアマゾンに対抗する戦略だ。フリーマーケットアプリ「ラクマ」の販促費が増えているのも、「メルカリ」に対抗する攻めの投資だ。
携帯参入で広告収入は爆発的に増える可能性がある
投資を増やしても最高益が更新できたのは、フィンテック事業の成長が続いているからだ。フィンテック事業の売上高は23%増の4108億円、営業利益は10%増の799億円。発行枚数で国内首位に立つ「楽天カード」の取扱高は約7.5兆円。営業利益も6・5%増の331億円と好調だ。楽天銀行の営業利益は17・9%増、楽天証券も15・4%増となり収益の柱に育ってきた。超低金利が続く中、楽天ポイントを使ったインセンティブが若年層に受けている。
そして今年10月には、自前の通信網を持つ移動体通信事業者(MNO)として携帯電話事業に参入する。楽天は現在も、NTTドコモの回線を借りる仮想移動体通信事業者(MVNO)として携帯電話事業を展開しているが、自前で回線を持てばサービスや料金設定で経営の自由度が増す。ドコモ、KDDI、ソフトバンクに次ぐ「4番目のキャリア」は、台風の目になりそうだ。
ECとフィンテックに通信が加わると、利用者は3つのサービスで共通のポイントやIDが使えるようになり、利便性が高まる。楽天に集まるデータ量は乗数的に増えるため、企業向けにはより精度の高い広告サービスが提供できるようになる。2018年の広告売上は14・2%増の963億円だったが、携帯参入で広告収入は爆発的に増える可能性がある。
ソフトバンクの孫正義社長が「ソフトバンクは投資会社だ」と宣言した今、日本企業の中で旺盛な投資を続ける事業会社は楽天、ファーストリテイリングなど数少ない。イニエスタ、ビジャの獲得から携帯キャリア参入まで、三木谷会長はすっかり「戦闘モード」に入っているようだ。